〔カズノコグサ・柱頭が3本から2本へ進化の途中か?〕(08/5/17) トピック目次 HPtop topic12
◇追記(08/5/24);各地からカズノコグサの柱頭情報が寄せられましたので、下段の《各地情報》をご覧ください。
◇追記(09/5/24);そのご柱頭を3本もつ個体を確認し別頁に掲載いたしました。《柱頭3本のカズノコグサ(進化の過程がみられる)》
(埼玉県さいたま市道場08/5/11採)
2本の柱頭の間に突起が見える。
退化した3本目の花柱の基部か?。
(右側の子房は作業中に下部を壊しての変形である)
(拡大図)
別頁の「イグサ科 カヤツリグサ科 イネ科、類似3科の図解区別一覧」を作成中に、日本で見られるイネ科では柱頭がほぼ2本であることに気がついたが、長田(1981、1993)はイネ科図譜でカズノコグサの花柱を3本と記し、甲府市産の図を柱頭3本として描いている。
東京、埼玉など数箇所でのカズノコグサを調べてみると、いずれも柱頭が2本であった。ところが上図をみていただくと判るように、子房の頂部に1小突起をもつものがかなりの頻度でみられ、この突起は花柱の基部が痕跡状に残っているとも考えられ、カズノコグサは柱頭3本から2本への進化の途中の状態を見せているのではないかと考えた。もしそうであるなら、進化の進行途中を垣間見ることのできる貴重な1例で、限りなくロマンを感じさせる事象にも思える。
長田1993の図譜ではすべての図を長田自らが描き(2点を除く)、子房などが描かれていない種類もみられることからも、みたものだけを描くという姿勢が読み取れ、誤認や誤記などは考えられず、柱頭3本のカズノコグサが必ず存在するはずと思える。
柱頭が3本であったカズノコグサが進化により柱頭2本となった。または、柱頭3本と2本とが日本の各地で住み分けている。あるいは、柱頭2本のものが帰化して全国的に多くなってきた。などなど色々な可能性が考えられ、すぐにでも真実を知りたいところであるが、外国文献をみる力なく、日本での分布情報を得るにはアマチュアとしてはなかなか難しく、情報やご教示をお待ちするしかない。
皆様のフィールドでのカズノコグサに柱頭3本のものがございませんでしょうか。(08/5/17;山口純一) この頁top
《参考文献》
長田武正 1981.原色野草観察検索図鑑pp.518.保育社.
―――― 1993.増補 日本イネ科植物図譜,776pp.平凡社.
(尚、他のイネ科関連の図鑑類では、カズノコグサの柱頭に関する記述を見いだせなかった)
牧野富太郎著 前川文夫・原寛・津山尚編 1961. 改訂 牧野新日本植物図鑑,1060pp.北隆館.
(牧野新日本植物図鑑のカズノコグサに、「子房に2花柱がある」との記述があることを、中村氏より情報いただだき確認した;08/6/9)
《各地からのカズノコグサ柱頭情報》
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◆08/5/19 群馬県館林市のカズノコグサはどれも、雌しべ柱頭が2本、との情報を「帰化植物メーリング・リスト(naturplant@ml.affrc.go.jp)」
青木雅夫氏からいただきました。
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◆08/5/21 福岡県北九州市の中村功氏から「帰化植物メーリング・リスト(naturplant@ml.affrc.go.jp)」にて、花柱2本のタイプと3本目が退化したと思われるタイプ、鮮明な画像情報をいただきました。
1.3本目の花柱は確認できず、花柱2本のもの
2.明らかに3本目の花柱があった、(退化した?)と思われるもの
まさに3本目の柱頭を期待させるような中村氏の画像です。(中村功氏のご好意により画像を掲載いたします。転載などはご遠慮願います)
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◆08/5/23 青木雅夫氏からカズノコグサの画像情報が届きましたので、ご覧ください。
青木氏の画像も大変鮮明で感心いたします。(青木雅夫氏のご好意により画像を掲載いたします。転載などはご遠慮願います)
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中村さんも青木さんも細かい小花部分を大変上手に分解され、優れた画像技術と併せての情報です。有難うございました。(08/5/24;09/5/24提供画像関連部修正)
尚、私の図は子房が少し大きくなった状態で、中村氏・青木氏の図はもっと若い時点での子房を対象としており、今回の場合は若い子房を対象とした方が判りやすいと思います。しかし時期が遅くなりつつありますので、3本目の柱頭の出現はすぐにとは行かないかも知れません。
また、私同様に写真の不得手の方もおられると思いますので、もし各地のカズノコグサの柱頭をご確認いただけた場合には、画像がなくとも結構ですので是非お知らせくださると幸いです。カズノコグサの柱頭に関する疑問が解ける日が来るでしょうか?、大変興味深く楽しみです。