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この頁概要 ◆《キクイモにはなれなかった、イヌキクイモ 07/12/6》 【左の要点抜粋07/12/16】  
        ◆《イヌキクイモについての一考察06/2/15》 ◆《イヌキクイモの根について06/12/17》


キクイモにはなれなかった、イヌキクイモ〕 <07/12/6;Y> 

はじめに
 久内1949によると、
「キクイモ Helianthus tuberosus L. とは別に、花期早く、葉が深緑色で、塊茎小さく形がチョロギ状の物が有るが、キクイモと混同されているのでイヌキクイモとかチョロギイモとかしたいと思う」と記されており、学名に H. strumosus L. var. willdenowianus Thell. をあてている。その後この学名の植物は、日本でイヌキクイモとよばれる植物とは異なる特徴 (茎の下部が平滑である点や、葉裏の毛が少ないなど) をもつ別の種類であることが判ってきたため、長野1997、K01、T03、H帰化などでは H. strumosus var. willdenowianus が、まだその時点で日本には帰化していない種類として、イヌキクイモ的特徴をもつものもキクイモ一種に含めて、キクイモの種内変異としている。

 帰化長田1976によると、キクイモに比べたイヌキクイモに対して
「いちおう区別はできるが、これらが別種とするに足る形質かどうか疑わしい。イヌキクイモもまた H. tuberosus の一型かも知れない」と記されている。K01によると「葉の色、鋸歯、花期、舌状花の数および先端の形状は、個体の大きさ、生育環境などにより左右されるとともに、これらの中間形があり、標本で区別するのは困難なことが多い」と記され、T03によると更に踏込んで、「野外および標本で区別するのは困難なことが多いので、これらを一括してキクイモと呼ぶことを提唱したい」と記されている。H帰化によると「日本で報告されているものは多くはキクイモに含められるものではないかと考えられる」と記されている。

 しかし、長い根茎の先に節のある紡錘形の塊茎を作るイヌキクイモは、広く日本の各地で認識されていて、明らかな塊茎の違いから、キクイモとイヌキクイモを別にする文献もみられる。筆者は、イヌキクイモがキクイモの一型であるのか否かは、地上部での区別が困難なことから、それぞれの「塊茎の問題をはっきりさせた上で結論付けられれば、この問題に終止符がうたれるのではないか」とした(HP山口06-02)

塊茎や根茎の違い
 キクイモはこぶの多い大きな塊茎を作る(帰化長田1976)、とされていて
(図:キクイモ1、キクイモ2 参照。HP石川の植物の画像掲示板・キクイモの塊茎 にも大橋氏の左の同図と、本多氏の鮮明な図が掲載されている)、イヌキクイモは長い根茎の先に節のある紡錘形の塊茎を作る(帰化長田1976)、と考えられている。(図:塊茎のつき方)(野に咲く花や帰化写真図鑑に、キクイモ・イヌキクイモの地下部の図がある)
 もしイヌキクイモがキクイモに含められるとするなら、横走する根茎や塊茎に違いがでるのは、それぞれの生育条件に要因があるとも考えられる。すなわち、イヌキクイモ的な型になるのは、河原の土手や荒地のような比較的硬く、地中に砂利や異物が混在しているような土壌環境下で、横走する根茎を伸ばして少しでも条件の良い地点で塊茎を成長させ、多くの小塊茎を用意することによって厳しい環境下での繁殖をはかる。それに対しキクイモ的な型になるのは、畑地のように比較的軟らかく均一な土壌環境下においては、こぶの多い大きな塊茎を生じさせることができるので、翌年の繁殖を効果的にはかれる。こうした生育環境の違いが根茎や塊茎の違いに関係するのではないかと推測される。
 もし、生育環境にそれほど左右されることなく、それぞれ異なった特徴をもつ地下部を安定的に作るのならば、イヌキクイモはキクイモとは別の種内分類群とされる可能性も強くなる。

栽培方法
 キクイモとイヌキクイモの塊茎や横走する根茎の性質を解明するには、
1、キクイモとイヌキクイモの塊茎を、同じ土壌環境で生育し、塊茎や横走する根茎に違いがでるのかを調べる。
2、キクイモ的な塊茎を荒地のような土壌環境で生育したばあい、塊茎や横走する根茎がどのようになるのかを調べる。
3、イヌキクイモ的な塊茎を畑地のような軟らかな土壌で生育したばあい、塊茎や横走する根茎がどのようになるのかを調べる。
などの方法が考えられる。
 筆者は、イヌキクイモ的な塊茎を軟らかな土壌で生育して、翌年どのような塊茎ができるのか、横走する根茎がどのようになるのかを見極めるため栽培を試みた。2006年の12月の初めに、埼玉県和光市新倉の荒川支流の小河川沿い土手でイヌキクイモを掘り起こし、チョロギ状塊茎を多数入手した
(HP山口06-12)。その中から比較的大きな塊茎を8個選び、横長の深いプランターの中に少し離して2個ずつを埋めた。土は特に養分の多いものではなく、ごく普通の安価なものを選んで購入し、畑地程度の軟らかさに仕上げた。肥料などの手当ては一切せず、夏の暑い時期の水分補給に多少注意を払ったが、そのほかは特別な管理をしないで育生した。

地下部の確認と結果
 2007年11月14日に、3個体の葉がほぼ枯れたため、1個体の花がまだ咲いている状態であったが地下部を確認することにして、地上部を数cm残して植物体の上部を取り去り、プランターを持ち上げると、底部の水抜き穴から4〜5本の横走する根茎が伸びだして先に塊茎をつけていた。なるべく横走する根茎から塊茎を外さないように注意しながらプランターから全体を引き抜き、付着している土を慎重に取り除いた。約半数ほどの塊茎が横走する根茎から脱落したが、かなりの数の塊茎が茎の地下部からつながった状態で、地下部全体を確保した。
図:イヌキクイモ1
 今回栽培を試みたイヌキクイモは、多数の長い横走する根茎の先にチョロギ状の塊茎を作り、イヌキクイモの特徴を8個体すべてが示していた。図:イヌキクイモ2

考察
 この実験では、こぶの多い大きな塊茎ができる可能性があると考えられる土壌を用意したが、中間的な形状などは全く見られず、全ての個体でイヌキクイモの特徴を示し、地下部の形質は極めて安定していた。したがって今回試した方法での野生のイヌキクイモに関しては、キクイモと同一のものと判断することはできず、少なくとも品種あるいは変種ぐらいの違いはあると感じた。イヌキクイモがキクイモに含められるとする考え方からは、いささか説明がつきかねる結果であるように思われる。
 ただし、これは上記「栽培方法」の3に記した方法での一例であり、まだ栽培方法1、2などを試しておらず、キクイモとイヌキクイモとが異なるものと結論された訳ではない。

 筆者は東京周辺が主なフィールドであるが、いままで野外で普通にみられるものを調べた限りでは、全てイヌクキイモの塊茎であった。いまだ野外でキクイモ的塊茎を認識したことがなく、塊茎が中間的なものにもまだ出会ったことがない。東京周辺の野生状態のものについては圧倒的にイヌキクイモが多いと考えられ、とりあえず現状ではイヌキクイモとキクイモとは区別しておきたい。

 キクイモとイヌキクイモとを区別する場合、区別点が地下部だけでは環境保全の観点からも実用的ではなく、地上部での区別点の認識が急がれる。従来の文献による葉や花など地上部の形質の違いの記述は一貫性がみられず、イヌキクイモをそれとは異なる H. strumosus var. willdenowianus と捉えて、その特徴を引用したとおもわれるものなども含まれており、記述の正誤の判断が難しい。今後の研究によって、地下部による種の確認ができた個体での、地上部の区別点が認識されることが望まれる。なお地下部の確認に当たっては、植物の変異を考慮すれば、こぶの多い大きな塊茎をつけるキクイモでも、横走する根茎や節のある紡錘形の塊茎を一部つける場合があること
(金子氏観察)、同じようにイヌキクイモにもキクイモ的な塊茎を付ける可能性が全くないとはいえないこと、などは考慮にいれておきたい。

今後の問題点
 上記「塊茎や根茎の違い」でのキクイモの各図をみると、茎の地下部に直接または短く伸びた根茎の先に塊茎をつけ、塊茎は茎の直下付近に集まるようにみえている
(図:キクイモ1、キクイモ2)。大橋氏は、キクイモはイヌキクイモのように細く伸びた根茎の先に塊茎をつけることはないので、引き抜くと図の様にかたまってついていた、と観察結果を述べている。
 一方、流通しているキクイモとして売られていたものを購入して栽培された観察情報では、金子氏は、塊茎はやや長い根茎の先に生じ、かならずしも茎の直下付近に集まらなかったとの観察結果を述べている。またイヌキクイモと同じ様であったとの観察結果もある(東京都)。

 キクイモとうい名で販売されているものには、新潟県・石川県で観察された大橋氏や本多氏の図にみられる典型的な地下部を作るものと、それとは地下部が多少異なる神奈川県や東京都で観察された様々なタイプがあることが判ってきた。このことは「栽培方法」での1、2の方法を試す場合には、一つのタイプのキクイモでの地下部の検証では完結しないことになるが、各地でさらに多くの観察がなされ、多くの事例を検証することによってキクイモの地下部の形質が解明され、イヌキクイモがキクイモに含まれるべきか否か、いずれ結論がだされることを待ちたい。尚、キクイモの分布情報として帰化長田1976によると
「特に北海道に多い」、との記載があり、温度や気候などの影響の有無なども興味深い。

(キクイモとイヌキクイモの地下部については、久内1949や牧野図鑑をはじめ現在まで多くの図がみられるが、塊茎の形状や大きさに重きをおかれた図がほとんどである。しかし、キクイモとイヌキクイモとが変異のうちにあるのか否かを論じる場合は、塊茎の大きさや形状の違いの確認も必要だが、むしろ、塊茎をつける根茎部分の形質や塊茎のつき方などの地下部の形態確認が欠かせない要素である。特に長い根茎の先についた塊茎は脱落しやすく、地下部全体の形状を示すことが困難な場合も多いので、栽培観察にあたっては地下部の状態を図などで示せるような配慮と工夫が必要である。)

謝辞
 この項を掲載するにあたり、新潟県の大橋成好氏には、キクイモの野生種・栽培種での貴重なご意見や情報をいただくと共に、キクイモの画像の掲載をお許しいただいた。神奈川県の金子紀子氏には、キクイモとイヌキクイモの栽培で得られた貴重なご意見と情報をご教示いただいた。ここに厚く御礼申し上げます。

 一般的には開花がキクイモの方がイヌキクイモより一月ほど遅いとされ、キクイモを栽培されているほとんどの方々は述べている。実際に野外で花期の差のあるものをみているが、今回実験に用いた8個体のイヌキクイモの場合では、花は初夏から咲きはじめ、全体では11月の初旬まで咲き続け、その中の一個体は10月初旬に一旦咲き終わったが、10月末頃から再び蕾をふくらませ11月中旬の時点でもまだ咲き続けていたことを記しておく。尚、イヌキクイモの学名に H. strumosus var. willdenowianus を使用するべきではない。
<07/12/6;山口純一>   この頁top

主な参考文献
浅野一男 1997.キク科 ヒマワリ属.長野県植物誌1997,pp.1057-1058.信濃毎日新聞社. (略記 長野1997)
大場達之 2001.キク科 ヒマワリ属.神奈川県植物誌2001,pp.1415-1417.神奈川県立生命の星・地球博物館. (略記 K01)
大場達之 2003.キク科 ヒマワリ属.千葉県の自然誌 別編4 千葉県植物誌,pp.632-633.千葉県. (略記 T03)
長田武正 1976.原色日本帰化植物図鑑,425pp.保育社. (略記 帰化長田1976)
清水矩宏 森田弘彦 廣田伸七 2001.日本帰化植物写真図鑑,554pp.全国農村教育協会. (略記 帰化写真図鑑)
高橋秀男 2003.キク科 ヒマワリ属.日本の帰化植物,p.204.平凡社.
(略記 H帰化)
林 弥栄(監修) 1989.山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花,624pp.山と渓谷社. (略記 野に咲く花)
久内清孝 1949.帰化植物,272pp.科学図書出版社.
(略記 久内1949)

参考HP

山口純一 2006.日本の野生植物検索表,イヌキクイモについての一考察.
http://homepage2.nifty.com/syokubutu-kensaku/topic05.html (07/12/6)(略記 HP山口06-02)
―――― 2006.日本の野生植物検索表,イヌキクイモの根について.
http://homepage2.nifty.com/syokubutu-kensaku/topic05.html (07/12/6)(略記 HP山口06-12)
本多郁夫 2007.石川の植物,画像伝言板,キクイモの塊茎.
http://www.fki-co.gr.jp/bbs/bb/bbs/0148/(07/12/6) (略記 HP石川)

 キクイモ・イヌキクイモに関しての、観察結果などの情報がございましたら、是非ご教示いただきたく、よろしくお願いいたします。
 尚、文中に筆者の感違い間違いなどがあるかもしれませんので、お気付きの場合はご指摘いただけますよう、お願い申し上げます。
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 (図:キクイモ1) 野生のキクイモ(新潟県阿賀市:大橋氏採品)
キクイモの塊茎 (図:キクイモ2) 植栽のキクイモ(大橋氏栽培品) 茎直下付近に大きな塊茎が着く。
キクイモの塊茎


(図:塊茎のつき方イメージ)
キクイモ・イヌキクイモの地下部図


(図:イヌキクイモ1) 地下部(筆者埼玉県産野生種の栽培品) 茎直下付近に大きな塊茎がつくことはなく、こぶの多い大きな塊茎はみられない。
イヌキクイモの地下部


(図:イヌキクイモ2) 8個体の地下部(筆者埼玉県産野生種の栽培品) 生育時には長い根茎は地表に対し横に這い広がる(写真では構成の関係から下垂させて写している)。2個体ずつ育てたため、それぞれ左側の塊茎群は2個体の横走根茎から脱落したものである。尚、プランター内で育生したために総ての塊茎が確保され示されている。
イヌキクイモの地下部


(図:イヌキクイモ3) 塊茎(大きなもの;今回の野生種の栽培品)
イヌキクイモの塊茎

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《「キクイモにはなれなかった、イヌキクイモ」の要点抜粋<07/12/16>

はじめに
◇久内1949は、キクイモ Helianthus tuberosus L. とは別にイヌキクイモを認識し、学名に H. strumosus L. var. willdenowianus Thell. をあてた。
◇その後この学名の植物は、日本でのイヌキクイモとは異なる特徴 (茎の下部が平滑、葉裏の毛が少ないなど) をもつ別の種類であることが判明。
長野1997、K01、T03、H帰化などでは H. strumosus var. willdenowianus がまだ日本に帰化していないとし、キクイモ一種に纏め、イヌキクイモは種内変異とした。

◇帰化長田1976は、これらが別種とするに足る形質かどうか疑わしい。イヌキクイモもまた H
. tuberosus の一型かも知れない、と記す。
◇K01は、生育環境などにより左右され中間形があり、標本で区別するのは困難が多い、とし、T03は更に踏込んで、これらを一括してキクイモと呼ぶことを提唱。
◇H帰化は、日本で報告されているものは多くはキクイモに含められるものではないか、と記す。

◇しかし、長い根茎の先に紡錘形の塊茎を作るイヌキクイモは、広く日本の各地で認識されていて、キクイモとイヌキクイモを別にする文献もみられる。
◇筆者は、イヌキクイモがキクイモの一型であるのか否かは、「塊茎の問題をはっきりさせた上で結論付けらるのではないか」とした。

塊茎や根茎の違い
◇帰化長田1976によると、キクイモはこぶの多い大きな塊茎を作る、イヌキクイモは長い根茎の先に節のある紡錘形の塊茎を作る、と考えられている。

◇もしイヌキクイモがキクイモに含められるとするなら、根茎や塊茎に違いがでるのは生育条件に要因があるとも考えられる。すなわち、イヌキクイモ的な型になるのは、荒地のような比較的硬く地中に砂利や異物が混在しているような土壌環境下では、少しでも条件の良い地点へ根茎を伸ばし塊茎を成長させる。それに対しキクイモ的な型になるのは、畑地のように比較的軟らかく均一な土壌環境下では、大きな塊茎を生じさせることができる。生育環境の違いが根茎や塊茎の違いに関係するのではないかと推測される。生育環境に左右されることなく、異なった特徴をもつ地下部を安定的に作るのならば、イヌキクイモはキクイモとは別の種内分類群とされる可能性も強まる。

栽培方法
 キクイモとイヌキクイモの塊茎や横走する根茎の性質を解明するには、
1、キクイモとイヌキクイモの塊茎を、同じ土壌環境で生育し、塊茎や横走する根茎に違いがでるのかを調べる。
2、キクイモ的な塊茎を荒地のような土壌環境で生育したばあい、塊茎や横走する根茎がどのようになるのかを調べる。
3、イヌキクイモ的な塊茎を畑地のような軟らかな土壌で生育したばあい、塊茎や横走する根茎がどのようになるのかを調べる。
などの方法が考えられ、筆者は、3の方法で、翌年どのような塊茎ができるのか、横走する根茎がどのようになるのかを見極めるため栽培を試みた。

地下部の確認と結果
◇2007年11月14日に地下部を確認。約半数ほどの塊茎が横走する根茎から脱落したが、かなりの数の塊茎が茎の地下部からつながった状態で、地下部全体を確保した。今回栽培を試みたイヌキクイモは、多数の長い横走する根茎の先にチョロギ状の塊茎を作り、イヌキクイモの特徴を8個体すべてが示していた。

考察
◇この実験では、大きな塊茎ができる可能性があると考えられる土壌を用意したが、中間的な形状などは全く見られず、全ての個体でイヌキクイモの特徴を示し、地下部の形質は極めて安定していた。今回試した方法での野生のイヌキクイモに関しては、キクイモと同一のものと判断することはできず、少なくとも品種あるいは変種ほどの違いがあると感じた。イヌキクイモがキクイモに含められるとする考え方からは、いささか説明がつきかねる結果であるように思われる。

◇筆者は、東京周辺の野生状態のものについては圧倒的にイヌキクイモが多いと考えられ、とりあえず現状ではイヌキクイモとキクイモとは区別したい。

◇キクイモとイヌキクイモとを区別する場合、地上部での区別点の認識が急がれる。従来の文献による葉や花など地上部の形質の違いの記述は一貫性がみられず、イヌキクイモをそれとは異なる H. strumosus var. willdenowianus と捉えて、その特徴を引用したものなども含まれており、記述の正誤の判断が難しい。今後の研究によって、地下部による種の確認ができた個体での、地上部の区別点が認識されることが望まれる。

今後の問題点
◇流通しているキクイモ名で販売されているものには、新潟県・石川県で観察された茎の直下付近に大きな塊茎が集まる典型的な地下部を作るものと、かならずしも茎の直下付近に塊茎が集まらなかった事例や、イヌキクイモと同じ様であったとの結果もあり、様々なタイプがあることが判ってきた。
◇このことは「栽培方法」での1、2の方法を試す場合には、一つのタイプのキクイモでの地下部の検証では完結しないことになり、今後各地でさらに多くの観察がなされ、多くの事例を検証することによってキクイモの地下部の形質が解明され、イヌキクイモがキクイモに含まれるべきか否か、いずれ結論がだされることを待ちたい。

◇尚、イヌキクイモの学名に H. strumosus var. willdenowianus を使用するべきではない。<要点抜粋終わり 07/12/16>
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イヌキクイモについての一考察》 <06/2/15山口純一>                         (イヌキクイモの根について
(参加MLの中での、イヌキクイモとキクイモとの考え方について、コメントした06/2/15発言を、若干編集して再掲)

 この問題は誰でもが一度は抱えて悩まれる事例であると思われますし、私も以前から同じ悩みを抱え、自分なりに取組んだ考え方を丁度昨年に纏めておりましたので、ご参考になればと考え・・・。
 しかし、読み返してみると、独善的考えですので、異論は多々あることと思われます。あくまでも素人の一考察ですので、お叱りやご意見を戴ければ幸いです。

@野外での観察
◆両種を区別するに当って、両種の詳細な分解・拡大図が<原色帰化長田>にあるので、これを参考に野外で生植物と照らし合わせても、なかなか明快に区別出来ない。現時点での私の知識では、塊茎を見ずに地上部だけでの判断では両種を区別するのは難しいと考えている。

◆一時、茎下部の毛の状態が異なるという情報があり、これに注目した時期があったが、イヌキクイモにあてた学名の植物の特徴に、茎下部が無毛であるというのがあ
り、これに惑わされた結果で、茎下部無毛の植物には出会うことはなかった。
(A参照)

A各図鑑に以下の様な記述がある
「イヌキクイモに対し、久内清孝はH.strumosus L. var.willdenowianus Thell.を当てたが、これは欧州における誤用に影響されたものである」<T03>
<K01>における欧州などに帰化している主な種類の検索表によれば「H.strumosusは塊茎が出来ず、茎下部は殆ど無毛」、となっている。
「欧米諸書は両者の区別に、茎下部が平滑か否かを挙げるが、今回集まった標本では平滑な物見当たらない(茎下部のない標本も多い)」<K01>
「H.strumosusは、葉柄1.5cm以下、葉の下面無毛、葉は殆ど対生する。この点でも一致する物がない」<K01>

B各図鑑では以下のよう結論付けている
「ヒマワリ属の多年草類は雑種多数あって北米では同定が極めて困難とされている」<T03>
「イヌキクイモとして日本に紹介された物の実体は、塊茎ができ、茎下部に粗毛が有るキクイモの1型であった、今回の目録から外した」<船橋02>
「野生化しているものは塊茎が小さいので、これをイヌキクイモとしてきた。しかし他にキクイモとの差がなくキクイモの変異の中に含まれる意見もある」<野草大>
神奈川県キクイモは1種と結論<K88><K01>、「長野県植物誌」でもキクイモのみ。
「日本におけるキクイモの種内変異は、葉色、鋸歯、花期、舌状花数・先端形、等は、個体の大きさや環境などで左右され中間型があり、野外や標本で区別するのは困難な事多く、一括してキクイモと呼ぶことを提唱したい」<T03>

Cキクイモとイヌキクイモとの異なる点
「H.strumosusが塊茎が出来ず茎下部は殆ど無毛」、とすれば、我々が見ている植物は塊茎が出来ているし、茎下部は有毛であるので、H.strumosusではないことになる。欧州の誤用に影響された学名はいたしかないとして、久内がキクイモとは異なる植物を認識しており「キクイモとは別に、花期早く、葉深緑色、塊茎小さく形チョロギ状の物が有るが、キクイモと混同されているのでイヌキクイモとかチョロギイモとかしたいと思う」<久内>、と塊茎の違いだけではなく、花期や葉の違いなどにも着目してイヌキクイモを、キクイモと分ける見解である。

◆明かに花期がひと月ほど異なる一群が存在する事は、方々で耳にするし、かなり多くの人が認識している事と思われる。私は、真夏頃に群生して目立つ花をつけ花期の早いイヌキクイモと思われる植物に対して、その近くにまだ蕾をつけないで、葉の色や鋸歯など感じも少し異なる一群が存在するのに出会うことは、度々あると感じている。

D塊茎を考える
◆イヌキクイモとされる塊茎は、各図鑑とも久内の描いた図と同じだが、キクイモとされる各写真や図は色々有るので参考になるものを集めてみた
(各書籍やHP、参加しているニフティのサークル掲載の写真や図を集めた物で、公開し難いが)

◆キクイモの塊茎の図としては、牧野図鑑、奥山春季図鑑、などにあるものは立派な形である。帰化写真図鑑のキクイモ塊茎も一型であろう。山渓の野に咲く花のキクイモ塊茎は、ややイヌキクイモ的な感じも受け中間的な気がする。その他、北大のHPにもキクイモ塊茎図があるが、これも形から考え中間的な感じを持つ。

◆さて、イヌキクイモをキクイモの一型とした場合、塊茎の性質がこれほど変化するものであろうか?、というのがひとつ。又、塊茎を茎直下につける性質と、長い細根を複数伸ばしその先につける性質とは、変種あるいは品種レベルの違いとすることができるのか?。このへんの知識を持ち合わせていない。
 考えれば考えるほど、塊茎の形は連続するようにも思えるし、そんなに変るのだろうか?、と迷ってしまう。

E結論を出すためには
◆この問題解明は、やはりキクイモ的塊茎をもつ植物を見つけることから始まると思う。塊茎を秋に掘り起こし、拳状のこぶの多い大きな塊茎をもつならば、それが野外ならキクイモとイヌキクイモは分けられるべきかもしれない。栽培して塊茎の継続観察で結論が出せると考える。塊茎を掘り起こす時期も重要で、地上部が枯れるころが良いのであろう。この時期には地上部の情報は失われており、その意味でも栽培継続観察しか方法はないように考える。

◆もう一つの方法は、栽培されているキクイモの塊茎を手に入れ、同様に栽培して塊茎の継続観察することである。この場合、畑のような軟らかい土壌で育成された場合にのみ、キクキモ的塊茎に成るのかも知れないので、土壌を変えて試す必要があろう。

◆キクイモの塊茎はJAなどで売られているという伝聞情報もあるので、栽培経験のある農家がわかれば、我々の知らない情報をもっているかもしれないが、我々のような視点で取り扱っているかはわからない。

◆全体的な流れはBの様で、イヌキクイモはキクイモの変化範囲の可能性はかなり高いとは思うが、やはりどなたかが塊茎の問題をはっきりさせた上で結論付けられれば、この問題に終止符がうたれるのではないかと考える。
 塊茎の性質が異なる事を確認したうえで、はじめて葉や茎や花の違いを比べる意味が出てくる。いいかえれば塊茎を確認せず地上部だけを調べてもこの問題の解決には至らないと思う。
 残念ながら、私は今まで拳状塊茎を期待して何度か掘り起こして根茎を調べてはいるが、今まではチョロギ状紡錘形の物ばかりであり、拳状塊茎を持つキクイモとするべき植物に出会っていない。しかしこれは東京周辺の作業であり、古い図鑑にはキクイモは北海道に多いとする記述がいくつか見られる。温度や土壌や地域などが異なれば、又結果も違ってくる可能性はあるかもしれない。
尚、花期と葉の色については、キクイモとイヌキクイモとが逆になっていると思われる図鑑があるので、注意が必要である。<06/2/15山口純一>

参考文献<文中略>
◇帰化植物1949久内清孝
<久内>、原色日本帰化植物図鑑1976<原色帰化長田>、千葉県植物誌03<T03>、神奈川県植物誌01<K01>、神奈川県植物誌88<K88>、野草大図鑑1990北隆館<野草大>、他、  トピック目次   この頁top


 イヌキクイモの根について <06/12/17;山口>

イヌキクイモの根

イヌキクイモの塊茎キクイモとイヌキクイモが同じ物なのか、別の物なのか、結論が出せるかどうかは解らないが、イヌキクイモの塊茎を求めて、12月の初めに見当つけて掘り起こして見た。
 枯れた植物体を引き抜くと、地表よりやや下に横に這う細根が見えるが、細根が切れるのでイモはついてこない。そして更に太根が下に降りていて、役目を終えたイモと思えるものが最下にある(地表から15cm程のところ)。

 おそらく植物体を維持する為には、地表より浅い位置では不安定だからであろうか。塊茎はかなり沢山出来ていて、密度から考えても全てが翌年成長して花を咲かせるとは思えず、淘汰されるものが多いのではと思われる。多分塊茎の大きさや、地表からの深さなども淘汰される条件に関係するのではなかろうか。

キクイモは塊茎が拳状に大きいとのことだがら、イヌキクイモのように細根を横に伸ばしてその先に小さなイモを沢山つけることはないと考えられるので、もしキクイモとイヌキクイモが同じだとするならば、土壌の硬軟が影響するのではないかと思われる。

栽培は殆ど経験ないのだが、畑の土壌の様に柔らかな状態で、イヌキクイモの塊茎を育ててみることにしたが、上手く行くかは余り自信はない。
千葉の岩槻さんが、キクイモの塊茎を育ててくれるらしいので、そちらに是非期待したい<06/12/17;山口>

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 syokubutu kensaku

シベリアメドハギ雑種