〔ホソムギの同定手順〕              トピック目次   HPtop   イネ科top  topic01
(参加MLの中での2006/6/2の返信を不必要部を省いて再掲)

この類の同定はどなたも一度は取組まれ、それぞれ自分なりの結論を出しているか、あるいはモヤモヤしたままでおられるか、いずれにしろなかなか難しい種類です。
 私は以前にこのMLにて、ネズミムギとホソネズミムギの区別を皆様がどのようにされておられるのか、質問した事がございます。その折はコメントいただき、一つの考え方を教わり大変参考になったこと感謝しています。
 今回は、ホソムギとネズミホソムギとの区別をお悩みのようですが、過去に同じ悩みを体験した一人として、あくまでも私的意見ですが、問合せに反応がないのも寂しいですので、ご参考になれば・・・と考え、私なりのホソムギを見分けるやり方を少し書いてみます。

 まず、ネズミホソムギは雑種ですので、両親のホソムギとネズミムギの特徴を考えます。両者を区別するキーは各図鑑によれば色々あります。護穎の芒の有無、新葉の出方、越年草か多年草か、第二苞穎の長さ、花軸のザラ付き、小花の数、葉巾、葉耳の有無、基部葉鞘の色、・・・。これらのうち、ハッキリ違いが判るキーを重視して、曖昧なものや、どちらとも取れるもの、実際には使用し難いものなどは切り捨てます。私は、護穎の芒の有無、新葉の出方、越年草か多年草か、を重視いたします。

 次に、ホソムギを探す場合には、思考するキーの順序が大変重要と考えます。一般的には護穎の芒の有無がキーとして良く知られているため、この特徴のみが一人歩きをしている感があります。極端な場合はこれのみで判定してしまう事例を良く見聞きいたします。
 しかしながら、ホソムギ探索に対し芒の有無を最初に注目するやり方は、なかなか労多くして功少ない方法ではないかと感じております。なぜなら野外ではこの類は大群落を作りますので、おびただしい個体数が生育しており、一々護穎の芒の有無を確認するのは、とても大変な作業であるといえます。
 そこで私は多年草か越年草かを第一に注目いたします。とはいうものの、歩きながらのまま一瞥にて多年草かを判別するのは大変難しく、ことばでは上手く表現できませんし、会得できているわけでもないのですが、じっさい野外では何かが違って見えるらしく、何度かホソムギに出逢えております。恐らくは株元を見ていて、なんとなく異なる感じを受けているのかも知れません。
 ですから、歩きながらその植物体を見て、おやっ?何かが違う?、と感じた時だけ注意をはらい精査することになります。しかも個体数はホソムギが一番少ないですので、注目回数も少なくて済みます。

 第二の注目キーは新葉の出方です。巻いて出てくればホソムギではありませんからそこで作業終了。そうでなければ更に同定作業を進めますが、ここまではそれ程時間をとられません。新葉まで進んでなお疑問が残る個体ならば、はじめて各護穎の芒を確認します。更に進めば、最後に掘り起こし多年草かどうか根茎を調べます。時間や手間の掛かる作業はなるべく後にする方がムダがありません。
 このような方法にて、ホソムギの各キーに総て合致する特徴が揃っていれば、これすなわちホソムギであると同定します。(ホソムギに限りなく近いネズミホソムギがあるとした場合、これを見分ける事は事実上不可能ですので、無視することになります)
 ネズミムギのもつ、越年草的性質、新葉が巻きながら伸びる性質は、強く遺伝するのではないかと私は感じております。ネズミホソムギには、これらの性質がかなり顕著に見られるようです。例えば、全ての小穂の護穎に芒が全く見られない場合でも、新葉が巻きながら伸びたり、根茎が越年草的生育であるならば、その個体はネズミホソムギだと思います。
 一度ご自分でホソムギを確認すると、不思議に次々見えてくるものです。眼が疲れるほどの努力をなさっておられれば、いずれこの件は卒業できると思いますので、是非頑張ってみてください。
 
尚、完全なネズミムギとネズミホソムギとの識別は、私にはまだ会得できないでおります。不可能に近いのではないかと、少々あきらめかけております
。(2006/6/2;山口純一)    トピック目次  この頁top        (検索表は『ドクムギ属』にあり)




簡単にアオスズメノカタビラの花序刺をみるには》 (07/7/21;山口純一)

 先に、アオスズメカタビラの花序枝の刺について記したが(下段参照)、植物にかなり詳しい方でも刺をみつけられない、と聞かされることがあり、改めて簡単に見る方法を記す。
(筆者はこの時点で、スズメノカタビラとアオスズメノカタビラの差異は研究中で、典型的なものは識別できるような気がするが、はっきり差異点を認識出来ていない)

◆市街地に普通に見られるアオスズメノカタビラは、その生育環境により発育の形状が異なる。田圃や広場などの風の吹き渡る環境では、稈は基部から平伏斜上してロゼット状に広がり、風を避ける形状をとる。複数の稈が伸びてきて束生状に生育してくると、はじめて稈は株の中央部付近から発生して直立して伸びてくる。そのため古い枯れた稈は、株の外側に位置している。
 本種は大きな植物体においても、高く成長するよりも風の影響を受け難い低い株を形成する。また殆どの場合、株を分解してみると複数の個体が混生している。おそらく種子は小穂ごとに落下することが多く、複数の種子の発芽により株状に混生すると考えられる。そのことが結果として株を密生させ、風などによる影響を受けにくくしているとも考えられる。
 更に本種は単純な越年草ではなく、複数年地下部が成育して多年草的な性質を持っている。筆者は8個体が根茎部でつながっている大株を見ている。

 それに対し市街地や林床などの比較的風への影響を受け難い場所においては、植物体は上への成長が大きく、そうじて丈の高い個体が普通に見られる。発生初期においても、稈は平伏斜上することは少なく、風の吹き渡る環境での個体のようなロゼット状とはなり難い。

 成育環境によるこの違いは、葉の成長や葉鞘や花序枝の違いにも及んでくる。風の吹き渡る環境の個体では、葉の葉身は短めで質はやや厚く、2つ折れの状態も葉身基部でしっかり閉じ気味である。葉鞘は長さのわりに巾が広くやや扁平で短く、やや質厚で丈夫な感じである。花序は全体短く、中軸の基部は著しく太くなりガッシリしている。花序の枝は稜があるものの丸みがあり、表面の珪酸化合物が形成する刺は出現し難い。

 一方、風の影響の少ない個体では、葉の葉身は長めでやや薄く感じ、2つ折れの状態は強くなく、葉身基部での開きは大きい。花序は高く抽出し長めで、中軸はなだらかに太くなるため、花序基部での太さは印象的ではない。枝の稜もやや鋭く、そのため表面の珪酸化合物が形成する刺は出現しやすい。

◇以上のことからお判りいただける様に、アオスズメノカタビラの花序枝の刺をみるには、風の比較的当たらない場所で、比較的大きな株で、花序が高く抽出している個体を選べば、およそ90%(印象からで実測値ではない)位の確立で、2〜4個以上の刺がルーペでその場で簡単にみられる。(特に花序の上の方で良くみる)

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アオスズメノカタビラの花序枝の刺(04/04/07;山口純一)

◆本種の同定には、体験からちょっとしたコツが必要
◇当時、稈が這うタイプのツルスズメノカタビラを確認できておらず、基本的なスズメノカタビラと、稈が這うタイプのツルスズメノカタビラとの2種類を考えていた。

◇千葉県植誌で、従来からあるスズメノカタビラと、それとは微妙に異なる種類で、しかも我々の周りに最も普通に存在するタイプであるアオスズメノカタビラとの2種類を対比して考え、着目点を、花序枝の小刺と護穎の中側脈が無毛〜少毛の固体に的を絞ることにした。

◇しかしながら、意気込んで取り組んだもののそうは簡単にはいかず。花序枝に小刺が見つからない。護穎中側脈が無毛のものにも出会えず、苦戦。4月4日小雨の日曜日に一株のスズメノカタビラの枝小刺を見ていた所、キラリと白いものが二つ光った。そのまま採集し帰宅後に採品を点検したが、護穎の中側脈には総て毛あり、少毛ともいいがたく、枝小刺も見当たらず。花序枝をバラして更に見て白く光る小刺を発見。一つ見えると次々と見えて、結局採集品総てに小刺が確認された。

◇今回の場合植物体を正面から見ても小刺発見できず、バラして小穂をつまんで枝や柄を回転させることにより、総ての側面が点検できることで、小刺が発見できた。

◇本種の小刺はルーペで充分確認が出来る。護穎の中側脈の毛は変化が在るのか、同定のキーにするには少々判断が難しくなり、参考程度が良い。

◇本種は稈基部が寝る傾向にあり、発根するともいわれるが、野外でそのような形状の物を見つけるのは、かなりやっかい。同定のキーに「蔓状に這う?」を先入観としてもつと迷路に入り込む。和名ツルスズメノカタビラは語感から受ける印象に惑わされ、本種に対しては適切とはいえない。


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ツルスズメノカタビラ考察》   (04/04/07;山口純一)

  私は稈が這うタイプのツルスズメノカタビラを確認できておらず、しかもスズメノカタビラの別タイプが存在する事を知らずにおりましたが、そのご発刊された千葉県植物誌のイネ科を見ると、アオスズメノカタビラ Poa annua L. subsp.annua、が記載されており、記述を
読むとどうやら普段我々が普通に目にしているものが、スズメノカタビラ Poa annua L. subsp.ではなく、アオスズメノカタビラであり、ツルスズメノカタビラと呼ばれることもある・・、とのこと。
―――
◆整理すると3タイプが存在。(神植誌01<K>、千葉植誌<T>、帰化ML<ML>)

@自然環境の残っている田圃などの休耕期に生育、花序枝平滑なタイプ  (<K>では柄に小刺有る場合あり)、
 <K>スズメノカタビラ var.annua  <T>スズメノカタビラ subsp.    <ML>スズメノカタビラ

A市街地に普通に見られる、花序枝に小刺がまばらにあるタイプ、
  <K>スズメノカタビラ var.annua <T>アオスズメノカタビラ subsp.annua  <ML>ツルスズメノカタビラ  

B芝地などに生育し、稈は結構長くはっきり倒伏し新苗を生ずるタイプ、
  <K>ツルスズメノカタビラ var.reptans  <T>: var.reptans 
―――
《考察》
@は従来から知られている特長を持つ種類で、和名はスズメノカタビラと成りそう、

AとBに出て来るツルスズメノカタビラ var.reptans は、
◇大井1957  :新鞘が伸長し倒伏して節から発根し新苗を出すもの
◇杉本1973  :側枝が倒伏し発根する
◇神奈川1988 :倒伏した稈の節から発根
◇神奈川2001 :葉身のある走出枝が数cmにわたり伸長し、栄養繁殖おこなう

の記述があり、これをAとするのは、神奈川88や杉本の、「倒伏し節から発根する」を主に重視した場合であり、できれば栄養繁殖をする種類のみをBのタイプにするのが妥当ではないか。

そうなるとAは、残る一つの和名アオスズメノカタビラ、ということに落ち着きそう。
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(現在、ツルスズメノカタビラは通常には存在せず、もし在っても極稀なもので奇形とも考えられ、何れにしろ種を明確に分けるなら、栽培し通年の性質を確認しなければ品種としても分けられないと考える。多分栽培しての研究はなされていないような気がする。;06/09)    トピック目次  この頁top


ヤクナガイヌムギについて(06/09;山口純一)

◆ヤクナガイヌムギはK88で、芒がやや長く、5mmほどの葯が花外に抽出しているものに対して学名不詳で和名ヤクナガイヌムギが与えられ、長田1993で学名B.carinatusを充てられた。

◇その後の勝山の研究(K01、H帰)で、イヌムギにも葯3〜5mmと長く、花外に葯が抽出するものがあることが判った;つまりこの時点で和名ヤクナガイヌムギは適切な和名ではなくなったといえる。
◇更に勝山は北米でのB.carinatusにいくつかのタイプがあることを述べていて、神奈川県標本とを比較検討して考察している。
◇護穎の芒の寸法、小穂の毛の状態、葉や下方葉鞘の毛の状態、など、連続していて曖昧であると思われ、検索のキーとしては不適と考える。

◇その中で、苞穎と護穎の長さの比は、長田は、内穎は護穎の2/3〜3/4、
                                  勝山は、内穎は護穎の3/4以上、
と述べるが、筆者が今まで調べたものではこれにしっかりと当てはまっていて、最も良いキーである。

◇葯の長さで分けられれば一番良いのだが、残念ながら両種を葯の長さで明確に分けることは無理であった。

◆葯の長さについて;葯の長さは採集時点の生育度により異なり、花序の下部では発達が遅く短い葯が混じるので、この寸法はキーとならない。
◆内頴の長さについて;内頴の比を判定する場合、花序の上部と下部ではそれほど異なることは少なかったが、小穂の小花の位置では上部ほど短くなる場合が見られ、判定は、花序の上部の小穂の基部の小花で、判断すべきである。
◆芒の長さについて;イヌムギの芒は、護穎の先が漸次細まり芒にと続くので、芒と護穎本体の境目が明確ではなく、誤差を生ずる場合も考えられ、ヤクナガイヌムギの最少寸法が芒2mm、イヌムギの芒の最大寸法が4mm程であるので、同定のキーとしては採用できない。   
(検索表は『スズメノチャヒキ属』にあり)
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在来?のカニツリグサと外来?カニツリグサ》(06/09;山口純一)

  野口2004は、在来のカニツリグサは遺存的環境に残されていて、小穂の色や葉や葉鞘の毛の状態が異なるなど、現在普通に見られるカニツリグサの帰化を示唆した論文が発表された。これを受けて各方面でも論議があるが、在来品の分布報告はまだ少なく、帰化品の認識は確定されるまでには至っていない。

  筆者は2006、神奈川県湯河原と山梨県北富士にて在来?の特徴を持つ個体を採集した。湯河原の生育場所ではヤマヌカボなどの在来の植物が多く見られ、また山梨の生育地は通常立ち入る事が出来ず、定期的火入れにより環境が持続的に維持されており、貴重な在来環境が残されている事がハッキリしている場所である。
少ない個体での比較であるが、仮に在来と外来と仮定して以下のような違いを記す。

◇在来?カニツリグサ
;小穂に濃い紫部あり(一見小穂緑色の若い個体でも精査すると紫部が肉眼で確認できる)
;葉表に白長毛多い;葉縁に開出白長毛多い
;基部の葉鞘に開出白長毛多く肉眼で判る
;植物体はやや背が低く、花序は各小穂が接近してかなり密穂状;止め葉は短い
;小穂はやや小さめで、第2苞穎は横から見て、やや線状長楕円形で、左右稜線は膨らみを感じる(比較すると、長さが短く巾が広い)
;自然度の残る古い環境

◇外来?カニツリグサ(野口仮称ニセカニツリグサ)
;基部の葉鞘には極短い斜下の毛がルーペでみられる
;小穂は普通緑色が多いが、紫帯びるものもある
;小穂は比較すれば僅かに大きめで、第2苞穎は線状被針形
;止め葉は長い(比較して)
;葉や葉鞘はときに白長毛つける
;帰化植物の存在する環境

◆木場2006は、◇神奈川県の標本130点では、両者を明確に区別できず。◇神奈川県の小穂紫帯、葉有毛の標本5点では、概して花序が密で小さく、上部の葉が短い傾向(葉長い物もあった)がある。◇2型が、在来の系統と帰化の系統であるかは、古い標本の観察や、世界のカニツリグサの分布全般に渡る分子マーカーを用いた解析等によらないと明かにならないと思われる。と記す。
◆従来のカニツリグサに対して、大井は 葉や葉鞘は時に長白毛をつける、と記す。
◆従来のカニツリグサに対して、小山は 小穂は時にやや紫渇を帯びる、と記している。

  比較標本少なく、決定的区別点を見出せていないが、区別できるのかどうか、在来品のその他の地域での分布状況など、今後の研究を待ちたい。                          
(検索表は『カニツリグサ属』にあり)
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ヒメコウボウと称されるものについて》(06/09;山口純一)

 従来のコウボウに明かな2型あるとして、小穂が小型のものに新和名ヒメコウボウが与えられ、こちらが基本種となるという説がある。記載されている両者のを区別点をは、以下のようである。

ヒメコウボウ;小穂3.2〜4.5mm;雄性小花の護穎は2.8〜3.5mm;護穎は濃色で背面の上半部の短毛は微突起程度
コウボウ    ;小穂4.3〜6mm;雄性小花の護穎は3.8〜4.5mm;護穎はやや淡色で背面の上半部に短毛密生

筆者の実測
◇コウボウ    ;小穂3mm〜   ;雄性小花の護穎は3mm〜     ;護穎はやや淡色が多いが濃色のものもあり、
                            上半部に短毛〜(稀に長毛もつものあり)やや密生する

 しかしながら、実際には上記実測を見て判るように上手く当てはまらず、記載されているヒメコウボウの記述どおりの固体もたしかに存在するが、小穂が3〜4mmで護穎3mmのヒメコウボウのサイズタイプでも、護穎淡色で護穎の背上半に短毛もあり、また護穎の濃色タイプはコウボウのサイズタイプでも見られる。
 毛については護穎の背に稀に長毛を持つものもあり、連続すると考えるのが妥当ではなかろうか。

結局、ヒメコウボウとするタイプでは、護穎の微突起程度の短毛だけが特徴となり、種を区別するにはいささか無理があろう。小穂の大きなものと小さなものがあるのは確かだが、もっと重視される新たな違いが見つかるまでは、分けないほうが良いと考える。尚 Kでも区別しない見解である。                
(検索表は『コウボウ属』にあり)
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ニワホコリ、オオニワホコリ、ムラサキニワホコリ、などのグループの混乱<山口純一;06/10>

  このグループはまだ全容が解明されておらず、現在まで学名の混乱などもみられる。

以下各記述概要

(Oに、「ニワホコリに比べ、花序が大きくて先が垂れ、枝の分岐点に2〜数本の軟毛のあることが重要な区別点とされる、時に中間形に出会う」とあり、
更にOに
「北川政夫1964によると、本来のE.pilosaは花序がオオニワホコリより小型で、普通直立し、小穂は濃紫、花序の分岐点はしばしば無毛であるといい、従来日本でオオニワホコリの名で呼んできた植物を新種として E.multispicula と命名している。多形なこの仲間から特に取り出して独立種とするには、列挙された特徴弱いし、欧州のものには花序の分岐点に毛のある方が多いので、しばらく採用を保留」とある)
(Kでは同様に、「両者の形態の差については異論もあり、ここでは異名として扱う」とする)
(Sでは、北川説と同様学名を使用しており、北川説に従っていると考えられる)


(Kに、「多くの図鑑で花序の分岐点に長毛あることがニワホコリとの区別点とされるが、無毛ながら他の形態がオオニワホコリそっくりな型が有る;これまでニワホコリとしてきたが、依り大型で、花序長さと巾も大きく葉鞘の口部は無毛か時に長毛があり、花序枝を分ける節は、ニワホコリが普通10個以下なのに対し10個以上を数える、生育環境や花期はオオニワホコリと変らない;分岐点無毛の点では var.imberbisの原記載に一致するが、Ohwi1941はニワホコリの異名としている」とし)
(更にKに、「Tsvelev1976は分岐点有毛の型を subsp.pilosa、分岐点無毛で花序4〜15cmの型を subsp.multicaulis、分岐点無毛で花序10〜25cmの型を subsp.imberbis 、と分けており、これらとの関係も併せ今後検討して見たい」とする)

上記を整理すると
◇多数図鑑でのニワホコリ    ;E.multicaulis         (Tsvelevの枝分岐無毛で花序4〜15cmの型)
◇多数図鑑でのオオニワホコリ;E.pilosa              (Tsvelevの枝分岐有毛の型)
◇Sでのムラサキニワホコリ   ;E.pilosa                                        (北川は、従来のオオニワホコリとは別種とする)
◇                          ;E.pilosa var.imberbis (Tsvelevの枝分岐無毛で花序10〜25cmの型;Ohwiはニワホコリの異名)
                            
(Kでの花序の分岐点無毛の型?;K図にオオニワホコリモドキの名PRINTあり、後に正誤表にて修正された)
◇Sでのオオニワホコリ       ;E.multispicula         (北川1964での従来のオオニワホコリに充てた新種学名)

H帰での記述
(H帰は、
「最近、オオニワホコリに似た、小穂がヤヤ大きいものが何系統か採集されている、何れも帰化と思われるが、正体は良く判らない」、 更に「その1部は花序が狭く直立し、小穂の柄が短く、北米のE.pectinacea(Michx.)Neesや、E.diffusa buckl.あたりに似ている」と記す)(仮称タチホニワホコリに該当すると考えられる;Y)
(H帰に、
「K01では98神奈川愛川町採品を、E.virescens J.Presl.と同定しアンデスカゼクサの和名をつけた、これもオオニワホコリに近いものである、このグループは在来ニワホコリも含めて検討を要する」と記す)

考察
(オオニワホコリ似で花序枝分岐点が無毛の形が存在し、分岐点の長毛をニワホコリとオオニワホコリとの重要な区別点とする事が、これらの混乱の一因と思われる。今後は花序枝分岐点の毛の有無を同定のキーから外すか、あるいは他の部分での明確な違いを見つけて、分岐点の毛の有無などはせいぜい参考程度のキーとすべきである。そもそも枝の毛や分岐点の長毛、あるいは微細な枝の刺などを、同定のキーとする場合は、補助的使用が前提であり、重要決定キーなどにしてはならないと考える。) 
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