イネ科の小穂各部の名称(下部に図あり)                         HPtop   イネ科top   属の検索   inekayougo1

 学者により、小穂の各部分の用語が異なり、やや混乱していて一般の研究者は一度はこの違いを理解しておかねばならない。
主な図鑑における用語の使用状況は以下の表のようである。
First Glume Second Glume Lemma Palea 採用している主な図鑑など
A 外穎  内穎 外ふ 内ふ 牧野1961、久内1949
B 第1苞穎 第2苞穎 護穎 内穎 小山1964、杉本1973、大井1982、長田1993、神奈川2001、千葉2003
C 第1苞穎 第2苞穎 外花穎 内花穎 清水1982、小山1997、清水2003
D 第1苞穎 第2苞穎  花穎 内花穎 大井1957
E 外苞穎 内苞穎 外花穎 内花穎 文部省案1990、鈴木1996
F 第1頴 第2頴 第3頴 第4頴 内穎 大井1982の、キビ亜科でのみ採用している
 
 最近は殆んどの図鑑が「B」を採用しており、ようやく統一が計れたものと考えていたが、最近発刊された帰化植物関連の重要な位置を占める図鑑で、また異なる方式を採用している。用語の混乱は学習する者にとっては不毛の労力であり、出版する側にもそれなりの考えはあるとは思うが、そろそろ学者の為の図鑑ではなく、一般読者の使用利便性を第一に考えた取り扱いをしてもらいたい。又そういう時代になってきていると考える。
 この問題は古くからあり、久内1949では
「あちら立てればこちらが立たぬ、こちら立てればあちらが立たぬ、両方立てれば身が立たぬ」と述べているが、半世紀以上も進歩がないことになる。

◆大井1982では、キビ亜科でのみ「F」を使用している。これはこの亜科が、小穂が2小花で構成されていて、第1小花は退化して多くは護穎のみになり、一見すると1小花に見えることからの工夫で、いちいち「退化している第1小花の護穎」等と思考せずに、単に見たまま「第3頴」と呼称する考えである。大変秀逸な工夫と考えるが、他の図鑑では採用されていない。初心者に判り易く説明するには更に工夫が必要かもしれない。 (大井1982キビ亜科での呼称図)

図説用語一覧》(この頁図中にあるもの)
◆主に花序部分の用語 :小穂しょうすい 苞穎ほうえい 護穎ごえい 内穎ないえい 小花しょうか柱頭ちゅうとう 子房しぼう やく
            鱗被りんぴ
(トピック「イネ科各種の受粉の秘密」に解説あり) のぎ 小軸しょうじく 基盤きばん
                       基毛きもう 竜骨りゅうこつ 綴毛てつもう
◆主に茎葉での用語  :かん(茎) 葉鞘ようしょう 完筒型かんつつかた 葉舌ようぜつ 葉耳ようじ

◆小穂の位置的表現の定義 :外側、内側、腹側、背側、前面、後面、左右、前後、背腹、向軸、反軸 など  花軸側かじくがわ・背軸側はいじくがわ

(別頁図にあるもの) : そう 
総状花序そうじょうかじょ 穂状花序すいじょうかじょ 円錐花序えんすいかじょ 密集円錐花序みっしゅうえんすいかじょ (「属の検索」→「花序の基本形状」を参照してください)
(図のないもの)   : 基凸毛(基部が太い毛)(筆者造語で図鑑では基部の膨れた毛などと表現される)

この頁の図は、長田武正 1993.日本イネ科植物図譜 増補.平凡社. 及び、一部図(大井)は、大井次三郎 1982.イネ科.日本の野生植物T 増補.平凡社. での各図より、部分的に一部を取り出し、必要に応じて修正追記し、新たな構想の下にに再配置、再構築したものである。   「長田武正先生追悼
イネ科用語図

イネ科用語図葉鞘は通常は両縁が重なりあって稈を巻いているが、縁が癒着した状態、いわゆる完全な筒状の場合があり、完筒型と呼ぶ。
( しかし時に曖昧で、下方1/3が完筒で、上方2/3は離れている場合もあり、この様な場合は完筒型と呼ぶべきではなく、検索などでも完筒型として使用するべきではないので注意 )
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綴毛
イネ科用語図

イネ科用語図竜骨とは、背などが強く2つに折れ曲がっている時、竜骨と呼ぶ。
内穎は通常左右に2脈があり、折れ曲がっていて、2竜骨がある場合が多い。

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《本サイトでの小穂の位置的表現》  この頁top
 小穂を見る表現に、外側、内側、腹側、背側、前面、後面、左右、前後、背腹、向軸、反軸、などあるが、どこかで定義しなければ曖昧である。当検索では以下のように表現する。
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◆小穂を見る時の方向表現は花軸を中心にして表現する。

 (小穂の位置)(赤は見えている部分)
 
   
   (小穂)(見る方向) 表現は「背軸側」と称す(対象の背後に花軸がある)(参考;他の表現→「背軸面、反軸側、外側」;葉の場合「裏、下面」)

(小穂
)   
(見る方向)  表現は「花軸側」と称す(対象の手前に花軸がある)(参考;他の表現→「向軸側、向軸面、内側」;葉の場合「表、上面」)
   

 
(花軸の位置)
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◆小穂の断面の表現は苞穎を正面に見て表現する。


 |←左右→|      「左右」(使用例;左右に扁平・・・・)
           _ 
  (苞穎)   
  (小花) 
前後・背腹 「背腹、前後」 (使用例;前後に扁平、背腹に扁平・・・・)
  (苞穎)   
   
     
(苞穎を正面に見る)    


《大井のキビ亜科での頴の呼称》

(第1苞穎 (第1小花護穎 (雄蘂+子房+雌蘂 (第1小花内穎第2小花内穎) 雄蘂+子房+雌蘂) 第2小花護穎) 第2苞穎) 
 (第1頴)   (第3頴)    
―――――(退化消失)―――――  ―――(外側から見えない)―――    (第4頴)   (第2頴)
(呼称のルールは、最小頴を1、その反対側最外頴を2、1頴側の内側の次頴を3、2頴側の内側の次頴を4、とする)
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