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《キク科 シオン属(Aster) ホウキギク節 図入り検索表》 (09/10/27)

検索表 (拡大表示&プリント用PDF→ホウキギク節検索図)
ホウキギク節図解検索、ホウキギクAster subulatus、ヒロハホウキギクAster subulatus var.subulatus、オオホウキギクAster exilis  この頁top

《学名》(学名はまだ定説がなく文献により異なる)
〔キク科キク亜科シオン連〕『ホウキギク属(Aster)ホウキギク節』

◇ホウキギク    
A. subulatus Michx. var. sandwicensis (A.Gray) A.G.Jones (田中2001)(副島2003)
          
A. subulatus Michx. (北村1981)(長田1997)
          
A. subulatus Michx. var. obtusifolius Fernald (大場2003)
田中(2001)は、ホウキギクは従来 A. subulatus があてられたが A. subulatus は変異の多い植物でホウキギクもオオホウキギクも含まれる。K88であてられた var. obtusifolius Fernald の実体はよくわからない。ここでは副島や Jones1990の記載がよく合うことから var. sandwicensis とした。と記している。

◇ヒロハホウキギク 
A. subulatus Michx. var. ligulatus Shinners (田中2001)(副島2003)
          
A. sp. (長田)
          
A. subulatus Michx. var. subulatus (大場2003)(K88)
田中(2001)は、ヒロハホウキギクは従来 A. subulatus var. subulatus があてられたが、最近の北米植物誌でみるとA. subulatus var. ligulatus の記載がもっとも良く合う。と記している。
副島(2003)は、ヒロハホウキギクは、原産地でも変異の大きい種であり、日本に帰化しているものの学名についても混乱が見られる、ここではA.G.Jonesの同定に従った。と記している。

◇オオホウキギク  
A. "exilis" (田中2001)
          
A. subulatus Michx. var. ligulatus Shinners (大場2003)
田中(2001)は、オオホウキギク田中により A. exilis Elliot として報告された、しかしBritton & Brown1913など北米の古いフロラで A. exilis とされていたものは、最近の北米フロラではヒロハホウキギクあてた A. subulatus var. ligulatus とされている。Godfrey & Wooten1981などでは A. tenuifolius L. の記載がオオホウキギクに近いが、ぴったりとは一致しない、学名については今後の検討課題である。と記している。

《注意点》

◇冠毛の長さによる区別について;
 花時のホウキギクのみは明らかに冠毛が管状花より長く確認が容易だが、ヒロハノホウキギクやオオホウキギクでは判別がしにくく誤同定の基になる。また冠毛は花後に伸びるので長さでの区別は適当ではない。舌状花の筒部の確認も現地では簡単ではない。

◇頭花の大きさについて;
 オオホウキギクの頭花は大きいが、花序全体には大小さまざまな頭花が混在し、総ての頭花が大きいわけではない。これはホウキギクやヒロハノホウキギクでも同様で花序中の頭花のおおきさは大小混在する。頭花の大小で種類を比較する場合は、花序中の最も大きい頭花で比較しなければならない。

◇果実の色や寸法について; 確認する時期に果実がちょうど熟しているかが曖昧で、良い検索キーではない。

◇舌状花の色について; 花色は白〜淡紫で、個体によっても異なり、検索キーとはならない。

◇総苞について; 総苞の長さは比較的安定している。総苞片の形なども安定していて、特にホウキギクの総苞片は倒形でヒロハノホウキギクやオオホウキギクとは区別できる。縁の白膜質部はホウキギクが一番広いが、オオホウキギクとの区別で白膜部が先端まで届くか届かぬかのキーは、傾向と捉えるべきで決定的ものにはならない。

◇側枝の出る角度について;
 ヒロハノホウキギクは確かに角度大きくでることが多く、一瞥での良い指標になるが確実なものではない。オオホウキギクも角度広くでる場合があり、同定は総合観察による必要がある。

◇葉が茎を抱くことについて; 検索図に示すように、いずれも茎を抱くために、検索キーとはならない。

◇被針形の葉について; ヒロハノホウキギクでは茎下部で被針形の葉がかなりみられる。オオホウキギクでも稀に被針形の葉がでることがある。

◇葉先の尖り方について; ヒロハノホウキギクは大きな葉も小さな葉も、先は細く尖る。ホウキギクやオオホウキギクでも葉の先は尖るが明らかに異なる。

◇葉の透脈について; ホウキギク・オオホウキギクと比べ、ヒロハノホウキギクの葉脈の透け方は明らかに異なる。特に被針形の葉をみると違いが良くわかる。

◇葉の形について;
 検索図に示したように、特徴的な場合はともかく一般的には葉形での区別は難しい。特に下方の葉に特徴が良く出るが、下方の葉は花時には枯れている場合が多く、なかなか苦労をさせられる。下方の節に束生する葉形では、ヒロハホウキギクではやはり細く尖る葉がでるが、ホウキギク・オオホウキギクではやや円頭の葉が認められ、オオホウキギクの方が丸みが強い傾向がある。

《野外での取組み方》
 最近は東京近郊では圧倒的にヒロハノホウキギクがみられ、ついでホウキギクが稀にみられる。オオホウキギクは沿海に多く、一般にはなかなか出会う機会が少ない。ヒロハノホウキギクは側枝の出る角度が特徴的なため、一瞥ではこの点に注目していき、気になる個体が出現した場合は被針形の葉を捜し細脈を透かして確認する。細脈の様子を頭に入れておいて、もし注目する個体が出現した場合には、改めて本検索表により精査していただきたい。


 これまで記してきたように、ホウキギク類の各文献に記載される特徴はかならずしも決定的で明快なものではなく、検索表にするのが難しい。また、雑種の同定は果実が十分熟した時期でないと判断ができない。(2009/10/27;山口純一) この頁top

《参考文献》
北村四郎 1981.キク科.日本の野生植物 草本V合弁花類,pp.156-235.平凡社.
大場達之 2003.キク科 シオン属.千葉県の自然誌 別編4 千葉県植物誌,pp.596-599.千葉県.
長田武正 1997.原色日本帰化植物図鑑,425pp.保育社.
副島顕子 2003.キク科 シオン属.日本の帰化植物,pp.211-212.平凡社.
田中徳久 2001.キク科 シオン属.神奈川県植物誌2001,pp.1354-1365.神奈川県立生命の星・地球博物館.

参考検索2001・2003『シオン属Aster』ホウキギク類部分を抜粋した<Y>
◆D.葉は無毛
◆E.頭花は径1.2cm以下で淡紫色
◆F.枝は60〜90度の角度で出る.花時,筒状花は冠毛より長く,舌状花の筒部は冠毛と同長.痩果は長さ2oで淡褐色【ヒロハホウキギク】
◆F.枝は30〜40度の角度で出る.花時,筒状花は冠毛より短く,舌状花の筒部も冠毛より短い.痩果は長さ2oで淡褐色【ホウキギク】
◆F.枝は10〜30度の角度で出る.花時,筒状花は冠毛とほぼ同長,舌状花の筒部も冠毛とほぼ同長.痩果は長さ2.5oで紫渇色【オオホウキギク】
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