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 〔キク科 タカサブロウ属 図入り検索表〕 (09/9/30)
 
検索表 (拡大表示&プリント用PDF→タカサブロウ検索図)
タカサブロウ属図解検索、タカサブロウ Eclipta thermalis、アメリカタカサブロウEclipta alba、中間形タカサブロウ この頁top

在来タカサブロウとアメリカタカサブロウの中間形について〕(09/9/30)

 梅本(1997)がアメリカタカサブロウを報告して以来、その特徴的な痩果の形状の違いから容易に両種の違いが識別されるようになったが、筆者は現場で若い痩果での誤同定を何度か繰り返した。理由は「在来のタカサブロウの痩果には両側にやや翼状の平滑な部分がある」とされた特徴に対し、アメリカタカサブロウの痩果にも顕著ではないが平滑な部分がある場合があり、痩果が若い場合に特に目立ち誤認してしまうことが原因であった。帰宅しての精査では両種の痩果が比較できるために誤同定は起きなかったが、現場での誤同定を克服するべく両種を調べるうち、いくつかのサンプルで中間形が確認された。中間形に関しては各地で認識されており、自然雑種もしばしばみられる(梅本1997)とされている。

《両種の痩果の基本的データー》
 在来のタカサブロウとアメリカタカサブロウの区別では、痩果の形状が第一の着目点であるので、各文献における痩果の記述を以下表にまとめ、筆者もサイズ等を計測した。
文献 在来タカサブロウ アメリカタカサブロウ
 梅本(1997)  長さ約2.8mm、巾約1.7mm
 翼状のでっぱり部分が側方についている
 長さ約2.1mm、巾1.1mm
 側方に翼の部分はない
 大場(1998)  長さ約2.6〜2.9mm、巾約1.7mm
 側面中央部にこぶ状隆起あり、縁は平滑でやや翼状
 長さ約2.1〜2.5mm、巾約1.1mm
 側面全体にこぶ状隆起があり、縁は凹凸がある
 清水(2001)  長さ約2.6〜3.1mm、巾約1.5〜2.0mm、巾の広い透明な翼が目立つ  長さ約2.4mm、巾約1.9mm、周りに翼はない
 高橋(2003)  長さ約2.6〜3mm、巾約1.7mm
 側面中央部にのみこぶ状隆起があり、縁は平滑でやや翼がある
 長さ約2mm、巾約1mm
 側面全体にこぶ状隆起がある
 矢内(2004)  長さ約2.9mm、巾約1.7mm  長さ約2.1mm、巾約1mm、周りに翼はない
 山口(2009)   長さ約2.5〜2.7mm、巾約1.7mm
 側面中央に1/3巾で縦に隆起部あり、平滑部が左右両側にある
 
 長さ約2.1〜2.4mm、巾約1.1〜1.3mm
 左右両側の平滑部はごく狭いか、または無い 

 以上のデーターに加え、検索表で示した痩果と総苞の特徴を加味して検証し、いくつかのサンプルを中間形と判断した。(葉や鋸歯の形状などは一定の傾向はあるものの明確な区分ができかねるため、この検証では採用していない。茎の形状による比較も同様に行っていない)

《痩果および総苞の図》(左から順に)
在来タカサブロウ(2009/9/8;埼玉県さいたま市採集) 中間形(2009/9/8;埼玉県さいたま市採集;サンプル1) アメリカタカサブロウ(2009/9/7;東京都昭島市採集)

在来タカサブロウ痩果・萼タカサブロウとアメリカタカサブロウの中間形の痩果・萼アメリカタカサブロウ痩果・萼
(注:痩果は完熟期のものを選び、総て同倍率である。総苞は熟期がまちまちのため倍率は調整してある)

◇掲載の中間形の痩果サイズ;痩果長さ2.0〜2.1mm、巾1.4〜1.6mm;両縁は平滑翼状部あり、角は丸みあり;萼はやや多毛、外片は長楕円形。痩果の長さはアメリカタカサブロウと同様で、巾は少し広くタカサブロウに近い。左右の平滑部はタカサブロウに似るが中間的ともいえる。総苞は明らかに中間形を思わせる。

 なお中間形として別に、痩果はアメリカタカサブロウと同様だが、総苞はタカサブロウに似たもの。痩果はタカサブロウに似るが総苞はアメリカタカサブロウと同様なもの、などもみられた。この頁top

《痩果と種子》
 タカサブロウ属の果実は、種子の外側を果皮が被う痩果であるが、果皮は痩果が熟すに従い徐々に発達する特徴を持つ。
 痩果の中央縦部は在来タカサブロウ・アメリカタカサブロウ、ともにこぶ状に果皮が隆起発達する。(図2では中央付近の痩果で、縦中央が発達し始める様子がみられる)
 痩果の左右両側は在来タカサブロウでは顕著に横に張り出して、やや翼状に形成される。アメリカタカサブロウでは痩果の左右両側は余り発達しない。

 果皮を取除いた種子の表面は、横波状の迷路のような溝模様があるが、在来のタカサブロウとアメリカタカサブロウでは、大きさが異なるものの良く似ている(図4)。(09/9/30;山口純一)


在来タカサブロウの痩果図1.在来タカサブロウ
(3痩果ずつ熟果から未熟果まで並べた)



アメリカタカサブロウの痩果図2.アメリカタカサブロウ
(3痩果ずつ熟果から未熟果まで並べた)



在来タカサブロウとアメリカタカサブロウの種子図4.果皮を取除いた種子(点状に残るものは取除けなかった果皮)
(左:在来タカサブロウ、右:アメリカタカサブロウ)






在来タカサブロウとアメリカタカサブロウの痩果と種子図3.果皮を取除く前と後
(左:在来タカサブロウ、右:アメリカタカサブロウ)


《参考文献》
大場達之 1998.アメリカタカサブロウ.千葉県植物誌資料 11:73-75.千葉県植物誌資料編集同人.
大場達之 2001.タカサブロウ属.神奈川県植物誌2001,pp.1413-1414.神奈川県立生命の星・地球博物館.
大場達之 2003.タカサブロウ属.千葉県の自然誌 別編4 千葉県植物誌,pp.624,631-632.千葉県.
清水矩宏ほか 2001.日本帰化植物写真図鑑,554pp.全国農村教育協会.
高橋秀男 2003.タカサブロウ属.日本の帰化植物,p.202.平凡社.
梅本信也 1997.タカサブロウの起源.山口裕文編 雑草の自然史,pp.35-45.北海道大学図書刊行会.
矢内正弘・松永麻子 2004.兵庫県におけるアメリカタカサブロウとタカサブロウ(キク科)の分布と生育地.日本帰化植物友の会通信 4:5-7.全農協.

参考検索2003・2001『タカサブロウ属Eclipta』
◆A.痩果は長さ約2.6〜3mm,幅約1.7mm,痩果の側面の中央部にこぷ状の隆起があり,縁は平滑でやや翼状.痩果の上面は狭菱形,側面は若いときは淡緑色で,熟して明るい褐色になる.頭花は巾約7oで総苞片の上部が急に狭まることはない.茎は一般に直立.葉は次種より大きく,鋸歯は不明瞭で,鋸歯の先端は赤い.葉の基部はやや広がる傾向がある【モトタカサブロウ】
(在来タカサブロウ)

◆A.痩果は長さ約2.1〜2.5mm,幅約1.1mm,痩果の側面全体ここぷ状の隆起があり,縁は凹凸がある.痩果の上面は菱形,側面は若いときから黒色の染みがあって,熟すと黒褐色になる.頭花は巾約5mmで総苞片の上部は急に狭まって尖る.茎は一般に匍匐.葉は前種より小さく,鋸歯はやや明らかで,鋸歯の先端は赤くない.葉の基部は次第にすぼまる傾向がある【アメリカタカサブロウ】
 
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