〔イネ科イチゴツナギ属 Poa 図入り検索表〕;《どこにでも普通にある入門種の検索》(更新07/4/7;山口純一) 図解検索top HPtop イネ科top zukensaku001
◆難解といわれるPoa属だが、いくつかの着目点をしっかり把握すれば難しくはない。是非多くの方に入門していただきたい。 検索図
◇Poa属には多くの種があるが、まず身の回りに普通にある基本種を見分けることが第一歩で、全体を理解する為の基本といえる。以下その着目点を解説する。
着目点A 『イチゴツナギ属Poa』の属としての認識。
初心者が必ず迷うのは、同定したい対象植物が、「はたしてPoa属かどうか」の点である。 慣れればすぐ迷わなくなるが、迷ったときの属の特徴を知っておくことは、基本中の基本である。以下
◇小穂の構成は[2〜8小花+短苞] ◇小穂は左右に平たく、無芒 ◇護穎は5〜多脈 ◇多くは小花基盤に綴毛(てつもう)ある
(小穂の外形から、ウシノケグサ属と迷う人が多い;その場合綴毛(てつもう)の確認が有効である)(下「綴毛図」参照)
着目点B 「葉先がボート状」とは
Poa属同定時に良く用いられるキーとして、「葉先がボート状」になることが知られる。 ところが、この「ボート状」について迷われる事例を幾つか見ているので、このことを解説しておく。
ボート状ではないとされる種でも、葉の先端は小さいながら、厳密にはボート状であることが、迷う要因の一つである。 一歩進めて、「葉巾が急に狭くなる」か「なだらかに狭くなる」かを考慮に入れる必要がある。(下丸ボート図参照)
(葉巾が一定で先端で急に狭くなると、より丸く感じるのは図を見ての通りである。そこでこれを「丸ボート状」と呼ぶ。一方、葉巾がなだらかに狭くなり、かなり先端で小さくボート状になる場合、葉先は丸く感じない。本検索ではこれを取入る)
(丸ボート状 ;スズメノカタビラ、オオイチゴツナギ、ナガハグサ)
(丸味ない ;イチゴツナギ、ミゾイチゴツナギ)
(変異多く両タイプあり;オオスズメノカタビラ)
ABまでは前段階で、ここからが本題です。
着目点C 外見での各種の特徴を見極める。(止め葉の状態にも着目する)
野外で本属を認識する場合、いちいち花序や葉舌の点検をするのは効率的ではない。関東の場合、基本6種の外見はかなり特徴があり、慣れれば外見だけでもほぼ判別がつく。つかない場合のみ、花序や葉舌などの点検をする。
(花序先が傾く、垂れる、など表現は難しいが、真直ぐに立っていない場合→ミゾイチゴツナギ) (近年本種と異なるものが見られる)
(植物体が小型である→スズメノカタビラ) (本種も環境でかなり大きくなる)
(葉巾が極広い→オオイチゴツナギ)
(著しく叢生し、全体粉白を帯びる→イチゴツナギ) (オオスズメノカタビラで粉白帯びるものがある)
(根茎が長く這うため単立し、止め葉が稈に沿って短く直立する→ナガハグサ) (花序先が傾くものがある)
着目点D それぞれの種特有な、葉舌の形状を把握する
本属の重要なキーとしては、葉舌が第一である。以下おおまかな変異を理解する為、各属それぞれ4種の葉舌を図示した。(検索図参照)
(葉舌は中型、縦と横が同じ位の長さ →スズメノカタビラ)
(葉舌は極短く鈍頭
→オオイチゴツナギ)
(葉舌は中〜短型、3角頭で着部も3角形→ミゾイチゴツナギ)
(葉舌はやや短い、鈍〜切頭 →ナガハグサ)
(葉舌は極長い長3角形 →オオスズメノカタビラ、イチゴツナギ)
着目点E 最も迷う「オオスズメノカタビラ」と「典型的でない場合のイチゴツナギ」との区別
葉舌の長さが最も長い両種であるため、典型的なイチゴツナギは紛れないが、そうでない場合、葉舌での違いは難しい。
そこで、花序の直下の稈上部に存在する刺の形状や多少がキーとなる。
(刺が上向きに多数配置され、手で上から下にしごくとザラつきが感じられる;
ルーペで見ても刺が多く、刺の上向きが判断できる→イチゴツナギ)(検索図参照)
(刺が下向きで疎らに配置し、手で下から上にしごくと少しザラつきが感じられる;
ルーペ段階では刺の上下は判らず、突起が疎らにあることが、やっと判断できる→オオスズメノカタビラ)
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番外;
◆ミゾイチゴツナギでは、花序の直下の稈上部が平滑なものから、長い下向きの長鉤形の刺が多数見られるものまで変異がある。(07/05/06修正)
◆市街地には、上記特徴に一致しない種が時に見られるが、新帰化の可能性も考えられる。(07/4/5、07/4/06にも確認している。)
以上をまとめた図検索表を以下に配した。ご参考にしていただければ幸いである。 この頁top
綴毛・葉先丸ボート図