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アカバナユウゲショウは季節によって開花時刻を変えるのか?〕(2011/3/18)

頁概要(PDFファイル→アカバナユウゲショウ開花詳細 頁1-2)

◆頁1 《はじめに》  《2002年9月23日、開花前の観察》  《2003年5月15日、早朝の開花観察》
◆頁2 《2003年5月11日から18日、開花と閉花の観察記録》  《2003年、春から秋の観察まとめ》  《2003年6月6日および24日、同花受粉の検証》  《参考》

はじめに
 アカバナユウゲショウ=ユウゲショウ
Oenothera rosea L'Her. ex Aiton の開花時刻については、夕化粧の名の由来や他のマツヨイグサ属の多くが夕方開花することから、本種も夕方開花するとされたり書かれたりする場合もあった。日中に開花していることが普通にみられることから疑問を持つ方がおられ、参加しているメーリングリストで話題になったことがきっかけで、筆者は2002年と2003年に開花に関する観察をし、結果を参加メーリングリストに投稿していた。
 2010年に『日本帰化植物写真図鑑 第2巻』が発刊され、「ユウゲショウ・ヒルザキツキミソウの花は何時咲くの?」と題してコラムが掲載され、「ユウゲショウはほとんどが未明から夕方までの1日花であるといえる」とあり、筆者の観察とは多少異なる結論となっている。そこで、本種にも色々なタイプがあることを記しておきたいと考え、ここに当時の筆者の投稿記録をそのまま掲載することにした。

 尚、筆者の観察したアカバナユウゲショウは、開花は午前(2)3時ごろから5〜6時ごろにかけてゆっくり開花し、夕方閉じる場合と閉じない場合があり不規則であった。年間でみると平均的には2日花で、1日で萎む場合もあり、天候など日中の温度や湿度に関係すると考えられる。
 花弁の開閉や柱頭の癒着についても不規則な場合がみられ、温度や湿度のほかに柱頭の粘液が関っていると思われる。2003年の検証個体では90%以上の確率で同花受粉を行い、柱頭は4〜7個まで変異が認められた。2011/3/17 山口純一。

(ほぼ投稿原文通り記載、前後の無関係部分は省いた)
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2002年9月23日、開花前の観察》 [naturplant:494] (埼玉県飯能市征矢町の荒れ地に生育)
◇観察時刻は午後3時。花弁は開いておらず、花弁がほぐれ掛けた半開きの状態。殆どの花の柱頭は直立して閉じております。しかしながら柱頭の縁には自分の花粉と思われる物が付着しています。雄しべと柱頭の位置は蕾の中で同じ高さの位置にあります。

◇午後3時半。依然として花弁は半開き。しかしながら殆どの花の柱頭は20度ほどの角度に少し開き始めておりました。観察は時間の関係でここまででしたが、恐らくこれから開花すると思われ、ユウゲショウの名の由来を充分感じさせます。

 先日の多摩川で見た個体は午後2時にはほぼ開花しており、柱頭の開いていない物が1花だけでしたが、この花も花弁は完全に開いておりました。花も柱頭も本日の物より大きかったような気がしています。今回は花を測りました。花弁長さ4.5〜6mm、柱頭部長さは直立した状態で3mm、次回の出会いが楽しみです。天気は先日15日も昨日23日も曇り。
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2003年5月15日、早朝の開花観察》 [naturplant:932] (埼玉県飯能市征矢町採集品の栽培1年目、大株で分枝多く多数の花を着けた)
 アカバナユウゲショウの花が咲きだしました。2002年の本MLでの話題で、アカバナユウゲショウが昼間咲いているとのことから興味を持ちながら、実際はどうなのか解決しないでおりました。以下、5月15日(雨)真夜中午前2時頃からの観察記録です。(この日は8個の花が開花)(萼の合せ目は4方向有り)

◇2:00、萼の合せ目1側が裂開し赤い花弁覗く。
◇2:20、萼の2側4側の合せ目下部3mmほど裂開。
◇2:40、裂開している萼の反対側の3側合せ目も下部3mmほど裂開する。
◇3:00、萼を押し開くように花弁が持ちあがり、花弁4分の1が萼から出る、上から花を見て柱頭まだ見えない(1時間経過)。
◇3:10、花弁2mmほど開き柱頭4個が開かずに揃っているのが見える。
◇3:20、花弁5mmほど開き柱頭4個は花弁内側と共に移動し開いている、葯は柱頭外側に接続し、その外側に花弁内側が接する。
◇3:30、葯は柱頭外側に依然接続しているが、花弁内側と葯は離れる。
◇3:40、葯は柱頭から離れる物も出てくる。
◇4:00、花弁10mmほど開く(2時間経過)。
◇5:00、完全に開花。

・こんなに早い時間に咲くとは思っていなかったので、開花を観察するのに4日かかりました。都合18花を見ましたが、雌しべ柱頭数は様々でした。この頁top
 18花中:柱頭4個が9花、5個が5花、6個が3花、7個が1花、 柱頭の数は結構バラ付きが有りました。

・全ての花で、開花時点ですでに葯は裂開していて、柱頭の縁に花粉が付着していました。柱頭は物理的に花弁が閉じている間は開いておりませんが、 花弁がほどけると同時に開脚して行きます。

・萼が破けてから、花弁が抜け出すまでに1時間、更にゆっくり1時間かけて10mmほど開き、合計3時間もかけてゆっくり開花、何故こんなに時間をかけるのでしょう。

・開花の程度は最上部ほど進行早く、地表に近い程進行遅い傾向。 閉じるのも同様に、地表に近い花ほど後からしぼみます。(8花はそれぞれ地上高さが異なります)

・15日開花の花は皆8個とも昼も夜も翌日まで完全に開いたままでしたが、日によって開花当日夕方に半開きに閉じる場合とが有りますね。日中の温度や湿度により、閉じるタイミングが異なるのかも知れません。

・本観察の固体は、昨年9月にコメント(494)した時の固体群で2年目の1株です(1株持ち返り鉢植したもの)。肥料を与えたせいか十数茎が叢生し、茎の成長に対し茎の強さが追いつかないと見え、各茎斜上しくねり、だんだんだらしなく株径40cm程に成っています。

 さて、ここまで書いてから、昨年のログ(494)を見て愕然としました。この時(9月)の開花は昼間の午後3時ごろだったのです。すっかり忘れておりました。本MLにご参加の、宮入芳雄さんの昨年の新聞掲載コラム中にて、オシロイバナ
Mirabilis jalapa L. は夏は夜咲いて秋になり気温が低下すると昼咲く、と教えて戴きましたが、アカバナユウゲショウもこういうタイプなのでしょうか?。ただしオシロイバナの場合は、(6月)16時、(8月)18時開花と別の情報もあり、この時期の開花は夕方とも思えます。
 アカバナユウゲショウがオシロイバナと同じタイプかどうかは別にして、季節によって開花パターンが異なるタイプの花はどの程度存在するのか。又この場合の開花の刺激は、体内時計や明るさではないと思うので、温度が関係するにしても、それほど単純ではなさそうですね。温度と何かとが複合的に作用しておきる現象なのでしょうか。

 和名ユウゲショウは、オシロイバナもアカバナユウゲショウも、同じく呼ばれますので、混乱しそうですね。この秋に、再度観察の必要がありそうです。真夜中の観察は・・・眠いです。

(以下は投稿文には記さなかった記録明細)
-----------------------------------(未投稿分)
2003年5月11日から18日、開花と閉花の観察記録》 (仕事の関係で朝と夕方以降の観察)
◇5月11日、開花3個(5時には全開してる)  →◇12日開いたまま             →◇13日萎む。
◇5月12日、開花1個            →◇13日は半開き状態            →◇14日萎む。
◇5月13日、開花3個(6時には全開してる)  →◇14日萎む。
◇5月15日(雨)、開花8個(5時には全開してる)→◇16日朝は開いたまま、夕方萎む?。
◇5月16日(雨後曇)、開花2個        →◇17日夕方迄開いたまま、23:30閉じている。→◇18日萎む。
◇5月17日、開花3個            →◇18日朝は開いたまま。
◇5月18日、開花5個(5:40には径10mm、6:10に全開、19時も皆全開、22:35には完全花・半開花・閉じかけの3タイプがみられた)
                      →◇19日朝4:00には開いたまま。

-----------------------------------(未投稿分終わり)
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2003年、春から秋の観察まとめ》 [naturplant:1462] (埼玉県飯能市征矢町採集品の栽培1年目)
 手持ちのアカバナユウゲショウの花が10月で咲き終わりました。季節によって早朝開花から、夕方開花へ変るのではとの期待は、残念ながら見られませんでしたが、色々な事を見ましたので今年のまとめとして報告致します。

◇花は午前3時ごろから開花しはじめ、5時から6時前後に完全開花する。
◇花弁が少し開いた時点で、葯はすでに裂開し柱頭に花粉が付着している。
◇雌しべ柱頭数は4個を中心に7個まで見られた。

◇花は1日で萎む場合と、2日目で萎む場合と有り、日中の温度と湿度の関係を示唆する(前日の天候により、真昼に開花している花は当日朝開花した物と、前日朝に開花した物が混在する)。
◇この時柱頭の太さは、明らかに前日開花したものの方が太く成っていると感じる。
◇花の色は2日目の花の方が色濃く、当日開花の花の方が美しい。

◇花弁が夕方まで完全には開かずに、やや開きから、半開きのまま夕方まで推移するものが時にあり、同様に花弁は開いても柱頭が夕方まで完全には開かないで、全部あるいは1〜3個の柱頭が癒着したままの花が時にあり、これらはそれほど稀な事例ではない。このときの天候は曇や雨のばあいが多く、これも日中の温度と湿度の関係を示唆する。
◇朝の時点で、柱頭が粘液で癒着して閉じたままの場合、以後は多少の変化はあるが、それほど大きくは変らずに、夕方まで推移することが多い。柱頭の粘液が関っていると思われる。

◇分解した花の最大、最小サイズ、花弁長さ5.1〜9mm、幅3.7〜9mm、柱頭長さ3.2〜5mm、葯長さ1.9〜3mm。

 本株は2002年9月に、午後3時から3時半頃までの観察記録が有り(494)、その時は丁度花弁がほぐれかけた半開きの状態で、これから開花するのではないかと、そのとき推測したのですが、又、同年同月、多摩川河畔にて、午後2時には周囲のアカバナユウゲショウが開花しており、その中で柱頭が癒着して開いていない物が1花だけみられ、この時も開花したばかりではないかと推測したのですが、ともに両日は曇の日であり、今回得た知識で考察すると、開花は通常どおり朝のうちで、たまたま上記(柱頭の癒着)のような現象ではなかったかと推測致すように成りました。
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2003年6月6日および24日、同花受粉の検証》 [naturplant:1462] (埼玉県飯能市征矢町採集品の栽培1年目)
 花弁がほどけて開いた径の幅順に時間を追って、「柱頭部を全部とる」・「柱頭の元1mmを残す」で実験した結果、午前3時25分、開花径2mmの状態で柱頭全部を取り去った場合以後は、90%が結実した。 更に、翌日の開花予想の蕾みでの実験では、総て不稔であった。(投稿文はこの様にまとめたが、明細は以下のようになる)

-----------------------------------(未投稿分)
◆(2003年6月6日 5:00) 開花前日(予想)の蕾みを対象とした。
◇3花で、柱頭の4分の3を取る→   【全部不稔】
◇5花で、柱頭の半分を取る→      【全部不稔】
◇3花で、柱頭全部取る→       【全部不稔】

◆(2003年6月24日)
◇3:25開花径2mmで柱頭全部取る→   「結実」
◇4:00開花径4mmで柱頭1mm残し取る→ 「結実」
◇4:30開花径7mmで柱頭取る→     【不稔】
◇4:40開花径7mmで柱頭1mm残し取る→ 「結実」
◇5:00開花径10mmで柱頭取る→     「結実」
◇5:10開花径12mmで柱頭1mm残し取る→ 「結実」
◇6:00完全開花状態で柱頭全部取る→  「結実」
◇6:05完全開花状態で柱頭1mm残し取る→「結実」
◇8:00完全開花状態で柱頭全部取る→  「結実」
◇9:00完全開花状態で柱頭全部取る→  「結実」
-----------------------------------(未投稿分終わり)
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《参考》
山口純一 2002.[naturplant:494] アカバナユウゲショウ続. 帰化植物ML(naturplant@ml.affrc.go.jp).
山口純一 2003.[naturplant:932] アカバナユウゲショウ開花観察記録. 帰化植物ML(naturplant@ml.affrc.go.jp).
山口純一 2003.[naturplant:1462] アカバナユウゲショウ報告. 帰化植物ML(naturplant@ml.affrc.go.jp). この頁top

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