《植物詳細図シリーズ シロガネチカラシバ Pennisetum villosum Fresen.      植物詳細図top   HPtop     zusyousai011

頁概要 (Pdfファイル)
◆頁1《シロガネチカラシバ詳細図》 
◆頁2《用語・略語》 《解説》
頁3《ノート》 《文献》

特徴的な部位の部分図 (2010/11/20 東京都港区採集)(Pdfファイル→シロガネチカラシバ1詳細図 頁1)
シロガネチカラシバPennisetum villosum

《形態学用語その他の略語は長田に順じた》(ABC順)
A:Anther(葯)
BR:branch(A involucre bristle was removed.) (花序の枝:総苞毛を取り外した)
F1:First (lower)floret(下方第一小花 )
F1p:First floret seen from palea side(内穎側からみた第一小花)
F2:Second (upper)floret(上方第二小花 )
G1:First glume(第一苞穎)
G2:Second glume(第二苞穎)
HA:Hair(毛)
INF:Inflorescence(花序)
Involucre bristle(総苞毛)
:Type which became a wing-shaped.(Part.)(翼状になった一型)(部分)
L1:Lemma of first sterile floret(lower lemma)(下方第一不稔小花の護穎)
L2:Lemma of second bisexual floret(upper lemma)(上方第二両性小花の護穎)
LI:Ligule(葉舌)
MO:Mouth of leaf-sheath (葉鞘口部)
Ovary(子房)
P1:Palea of first sterile floret(lower palea)(下方第一不稔小花の内穎)
P2:Palea of second bisexual floret(upper palea)(上方第二両性小花の内穎)
Part.(部分)
PI:Pistil(雌しべ)
:Young pistil(若い雌しべ)
Perspective view of bisexual floret(両性小花の透視図)
S:Spikelet(小穂)
2S:A part of 2 spikelet(2小穂の一部)
3S:Three spikelet surrounded by involucre bristle
(総苞毛に囲まれた3小穂)
Stamen(雄しべ)
Stigma(柱頭)
T:Plant(most1y total view)(植物体)
TS:Transverse section of culm(稈の断面)
:The section of the upper culm(上部の稈の断面)
:The section of the lower culm(下部の稈の断面)
両:Bisexual(両性)


シロガネチカラシバ Pennisetum villosum Fresen. (P2) (11/2/25) (Pdfファイル→シロガネチカラシバ解説 頁2 頁3)


 白く光沢のある総苞毛が目立つ密集円柱花序は、一見パンパスグラスを小型にした様な姿で植物体の同定は容易である。小穂は両性花を含む2小花で構成され、苞穎が護穎より短く、小穂の基部に総苞毛があり、熟期には小穂が総苞と共に脱落することからチカラシバ属 Pennisetum とされる。本検索サイトでの属タイプ「5B型」【構成2小花;2小花+苞穎(小穂より短)】で、小穂略記は[2小花+短苞]である。我が国には自生がなく、逸出によるイネ科帰化植物で長田(1993)に本種の掲載はない。

解説》(2010年、東京都港区採集品による)

◇多年草。草丈40〜70cm。下部で盛んに分枝し大株となる。稈は中実で、稈の上部では中心部が髄状の柔らかい組織で構成されている。節は無毛。
◇葉身は長さ10〜50cm、巾2〜6mm、葉縁と葉表の脈上は粗造。葉表の基部に白毛がやや密生する。基部が膨れた白透明の長毛が葉表や葉身の下部縁に疎生する。
◇葉舌は膜質部がなく、長さ1〜1.3mmの毛が密に列生する。
◇葉鞘は無毛、稀に上部縁に白長毛が少数みられる。

◇花序は長さ7〜12.5cm、小穂のみでの幅1.5〜2cm(総苞毛を含めると幅8cm)、密集円柱状に頂生する。緑色の小穂が白く光沢のある多数の総苞毛に囲まれ、雌性期には各小穂頂部から1個の柱頭が1cmほど抽出して特徴的である。
◇総苞毛は小穂の基部の周囲に輪生状に多数並び、分花序の短い枝に20〜80個が見られ、小穂が多いほど数も多くなる。総苞毛の主軸は白色で上向きの刺毛が全面にあり、おおむね三タイプの形状が認められる。大多数は内側(上部)にある主軸の中下部に光沢のある透明な細長毛を羽状に列生する標準的タイプで、長いものでは55mmに達する。標準タイプより細くて羽状毛を持たないタイプが外側(下部)に数本あり、長さは標準的な羽状タイプのものより短い。もう一つは標準タイプの両縁が翼状に張り出して主軸が扁平となるタイプがあり、ごくまれにみられる(図参照)。
◇小穂は花序の短い枝先につき分花序を構成する。下部の枝には3(4)小穂、中段の枝では2小穂、上部の枝では1小穂、頂部3〜4枝には小穂が退化して淡褐色の総苞毛のみのものがみられる。花序枝の基部に関節があり熟期には小穂と総苞毛をつけたまま枝ごとに脱落する。枝には白毛が密生する。花序中軸には上向き刺毛が全体にみられる。
◇小穂は白緑色、披針形、長さ10〜13mm、無毛。

◇第一苞穎は長さ0.6〜1mm、鈍〜円頭、無〜不明1脈、薄膜質で無毛。第二苞穎は長さ3.5〜4.5mm、長卵形で先は長く鋭尖頭、1脈〜不明3脈、膜質無毛。
◇小穂には2小花があり、下の第一小花は雄性ときに無性、上の第二小花は両性。
◇下方第一小花の護穎は長さ8〜11mm、数脈。内穎は長さ7〜8mm、竜骨状2脈、上部竜骨は粗造。
◇両性の上方第二小花の護穎は長さ9〜12mm、7脈ほど。内穎は長さ9mmほどで2脈。
◇雌しべ1個。花柱と柱頭は1個。若時の柱頭部分は膜質で、熟期には細裂しブラシ状となり、小穂の2/3〜同長ほどで小穂の頂部から突き出して特異である。
◇雄しべ3個。葯は長さ4〜5mm、はじめ黒褐色で熟期には淡褐色となる。花糸は底着する。
◇鱗被は確認できず。
◇果実は総苞毛と共に分花序の短い枝ごと脱落し、風散布される。

ノート(P3)
 透明な光沢のある羽状細毛を軸の両側に列生させる多数の総苞毛が、白緑色の小穂をつつみ、花序全体がわずかに白緑色を帯びて美しく、園芸名ギンギツネなどの呼称で観賞用に栽培される。木村(2003)によると、アフリカ〜アラビア半島原産で日本では2001年に千葉県で記録され和名が新称された。千葉県・神奈川県・東京都での帰化の記録があるが、花穂の美しさから各地で栽培されていることが予想され、さらに多くの逸出があると考えられる。

◇中空の稈をもつことが多いイネ科植物だが、ジュズダマ属(Coix)やワセオバナ属(Saccharum)など、中実の稈をもつものもいくつか知られる。本種の稈は中〜下部では全体に均一の組織があり、稈の上部では断面の中心部が髄状の柔らかい組織で構成されていて、イネ科の中では特異である(図.TS)。

◇基部の膨れた台から伸びだす半透明のやや長い毛が(図参照)、葉表や葉身基部の縁などに散生する。しかし乾燥時には葉が二つ折れし、両縁は著しく表側に巻き込むため一見無毛にみえることが多い。

◇総苞毛は形態的にやや3形がみられるが、外側(下部)に位置する羽状細毛を持たない細い毛と、内側(上部)に位置する羽状細毛をもつ標準タイプの総苞毛とは形態が異なるが、両縁が翼状に張り出して主軸が扁平となるタイプは、おそらく標準タイプへの移行形ではないかと考えられる。

◇少数例の調査ではあるが、本種は今のところ柱頭は1個のようである。筆者はこれまで出会っていなかったが、柱頭1個のイネ科植物は極めて稀である。
 私見だが、これまでイネ科植物は柱頭3個(カズノコグサでまれにみられる)から2個へ進化してきたものではないかと想像していたが、柱頭1個の種類が存在することで、進化の道筋は単純ではなく様々な経路がありそうだと改めて考えさせられる。(2011/2/25:山口純一)

《文献》
木村陽子 2003.イネ科.千葉県の自然誌 別編4 千葉県植物誌,pp.711-787.千葉県.
金子紀子・古川冷實 2006..FLORA KANAGAWA 63:783-785.神奈川県植物誌調査会.

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