本種はイネ科ハマガヤ属 Diplachneで、図鑑によってはハマガヤ属をアゼガヤ属 Leptochloa にまとめられている場合もある。本検索サイトでの属タイプ「3F型・6F型」となり、 【構成多小花;5〜13小花+苞穎(小穂より短)】で、小穂略記は[5〜13小花+短苞]である。
《各部分の形態》
◇小穂(図S)は多段状の花序総(図INF)の片側に並び(図BR)、やや円柱状で長さ6.5mmほど、6小花ほどからなる。護穎と内頴が部分的に薄墨色に色づき特異である。
◇第一苞穎の長さは1.7mmで1脈(図G1)。第二苞穎の長さは2.8mmほどで、1脈(図G2)。
◇護穎(図L)の長さは2.8〜3mm、先は不整に4〜5浅裂し、中央の裂片間から中脈の先が0.6mmほど出て芒となる。緑色の3脈が目立ち、本採品では中脈(図midnerve)の両側に白く艶のある伏毛が2筋目立ち特徴的であるが、他産地品でも同様であるかは不明である。側脈の外側にも白い艶のある毛が密生する。
◇内頴は護穎より短く、長さ2.5〜2.8mmほど、2竜骨があり、縁側の面には白い艶のある毛が密生する。竜骨上には微刺が列生する(図P)。
◇小花の基盤は有毛(図CS)。鱗被は膜質で長さ2.5mmほど(図LO)。雄しべ3個。葯の長さ0.3mm(図A)。
◇柱頭はブラシ状(図Stigma)で花柱は細い(図Style)。花柱の基部は塊状肉質で子房につながり、頴果が新鮮な時期では頂部に2個の緑色の花柱脚が残っている(図Base of Style)。
◇頴果の長さ1.3mm(図GR)。葉舌は6〜7mmほどで、不整歯牙状に裂する(図LI)。葉巾〜6mm、中肋と側脈は白く、葉鞘と共に両面無毛(図MO)。
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◆護穎の先は産地によっては無芒の場合もあるらしく、芒の有無をハマガヤとの検索のキーにする図鑑もあるが、本採品は有芒であった。
◇小穂の薄墨色は、採集日より2〜3日と経過するごとに段々色が濃くなっていく。又、若い花序では下部の小穂より上部の熟度の高い小穂のほうが、より濃い色であった。
◇本来は塩湿地性の帰化植物といわれるが、本採品はかなり内陸部で、周囲に塩地性植物は見られない場所であった。人為的な土の移動などに随伴持ち込まれた可能性も考えられる。(07/8/16 山口純一)
《主な参考文献》
古川冷實 2001.イネ科 アゼガヤ属.神奈川県植物誌2001,pp.316-318.神奈川県立生命の星・地球博物館.
勝山輝男 2003.イネ科 アゼガヤ属.日本の帰化植物,pp.274-275.平凡社.
木村陽子 2003.イネ科.千葉県の自然誌 別編4 千葉県植物誌,pp.711-787.千葉県.
長田武正 1993.増補 日本イネ科植物図譜,776pp.平凡社.
杉本順一 1973.日本草本植物総検索誌U単子葉編,630pp.井上書店.
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