《植物詳細図シリーズ》    ノレンガヤ Lamarckia aurea (L.) Moench     植物詳細図top   HPtop   イネ科top   zusyousai001

  特徴的な部位の部分図 (採:07/5/27 東京都江東区)
       解説
詳細図ノレンガヤLamarckia aurea《形態学用語その他の略語は長田1993に順じた》(ABC順)

A:Anther(葯)
AW:A part of awn(芒の一部)
Bisexual spikelet(両性小穂)
F1:First(lower)floret(下方第一小花)
Fr:Rudimentary floret(退化して痕跡的な小花)
G1:First(lower)glume(第一苞穎;下苞穎)
G2:Second(upper)glume(第二苞穎;上苞穎)
GR:Grain(caryopsis)(果実;穎果)
INF:A part of inflorescence(花序の一部)
L1:Lemma of first floret(lower lemma)
               (下方第一小花の護穎)
Leaf(葉)
LI:Ligule(葉舌)
MO: Mouth of leaf-sheath(葉鞘口部)
Ovary(子房)
P1:Palea of first floret(第一小花の内穎)
PD:Pedicel(小穂の柄)
RC:Rachilla of spikelet(小穂の中軸;小軸)
SC:Scale(鱗片)
Ss:Sterile spikelet(不稔小穂;結実性のない)
SH:A part of leaf-sheath(葉鞘の一部)
Stigma(柱頭)
Stamen(雄しべ)
?:Style?(花柱)



































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 ノレンガヤ Lamarckia aurea (L.) Moench

 本種はイネ科ノレンガヤ属で、特異な花序の外観から、同定は容易である。 
(Web上に多くの画像があり、全体図はそちらを参照ください)
 長芒の目立つ密集円錐花序を形成し、本検索サイトでの属タイプ「3B型」となる。
 両性小穂と無性小穂とがあり、両性小穂は【構成2小花;1小花+芒+苞穎(小穂と同長)】で小穂略記は[1小花+芒+長苞]。無性小穂は
[多頴+短苞]である。

《各部分の形態》
◇密集円錐花序;直立する花序軸及び節枝に対し、多数の小穂を水平に付ける(やや下向き・やや上向などある);各節の枝は1〜2本で、いずれも中軸に沿い直立する;枝から出る分花序の柄は、曲がりながら一方向に向けて分花序を付ける(図INF);分花序は1個の稔性小穂(図bisexual spikelet)と2〜4個の無性小穂(図Ss)とで構成される;若い分花序は淡緑色、成熟後は淡白渇〜淡褐色となる。

◇稔性小穂は、小穂と同長の2個の苞穎(図G1,G2)と、両性の第1小花(図F1)、芒と小鱗片に退化した第2小花とで構成される。
;苞頴は狭被針形で、芒状先端までの長さ3〜4mm;両性の第1小花護穎は芒を除いて長さ2〜2.5mm、背上部から長い芒を出す、内頴は護穎と同長かやや短い;退化した第2小花は、長さ2mm程の小軸(図RC)の先に長芒が屈曲して続き、やや「くの字」形に屈曲した部分に0.3〜0.8mm程の退化護穎
(図Fr)が付着して特徴的である。

◇無性小穂は同長の2苞頴と、3〜10個内外の空の護穎(図SC)とで構成される;苞頴は長さ2.5〜3mm、護穎は長さ1.5mm前後。

◇頴果は長楕円形で長さ2mm程、頂部に巾0.2mm、高さ0.1mm程の嘴状物(図?)(花柱の一部か?)が付属し、その頂端左右から長い柱頭が伸びていて、果時も柱頭の下部は宿存する。

◇子房(図Ovary)は、頂部両端から2個の平ひも状の柱頭(図Stigma)を小花内に伸ばす;柱頭は長さ2mm程で、全体に腺状の突起を疎らに付ける;熟期には柱頭が小花外に伸び出ていて、頴果の頂部にやや丸まって宿存する;若い状態では子房全体が同色同質にみえ、特に嘴の部位を区別できなかった。

◇雄しべは3個で、葯
(図A)は長さ0.3mmほど、熟期にも小花外に伸びておらず、先端を小花外に覗かせる程度であった。

◇葉巾は2〜3.5mm;葉舌(図LI)は長さ7mm程;葉鞘の左右縁の半透明膜質部は巾1〜1.5mm以上有り、葉舌と連続していて葉鞘口部の様子も白膜部が目立ち特異である(図SH)。
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 和名ノレンガヤはその花序の様子からの命名であろう。花序の姿形などから、園芸品としては人気がありそうである。
花序の様子、無性小穂の形状、稔性小穂の第2小花の形状、柱頭の形状、成熟頴果の頂部、葉舌と葉鞘の白膜質部、などいずれも極めて特徴的であり、なかなか魅力的な植物である。葯の位置などからは、印象としては同花受粉の確立が高い種の様に思える。

 今回の調査においての個人的認識としては、同定に余り関係しないイネ科植物での柱頭などの形状に対しては、今までほとんど注目してこなかったが、決して皆一様なブラシ形の形状とは限らず、様々なタイプが有ることを知り、今後の興味の対象が広がった。

《謝辞》
この項を掲載するに当たり、naturplant(帰化植物ML)にて、ノレンガヤつりーの皆様から、多くの情報やご示唆をいただきました。厚く御礼申し上げます。(07/6/6 山口純一)

主な参考文献
勝山輝男・歌川道子 1989.ノレンガヤが横須賀市に一時帰化していた.FLORA KANAGAWA 57:709-710 .神奈川県植物誌調査会.
長田武正 1993.増補 日本イネ科植物図譜,776pp.平凡社.

杉本順一 1973.日本草本植物総検索誌U単子葉編,630pp.井上書店.
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